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読売新聞Webコラム・解説 2019/03/15 17:00
ご参考URL=https://www.yomiuri.co.jp/column/column/20190314-OYT8T50029/

     デスクの目~変人宰相のワンフレーズのすすめ

 劇場型政治で高い人気を誇った小泉純一郎・元首相は、そのカリスマ性から織田信長に擬せられた。

 「変人宰相」の異名を持ち、永田町の常識を打ち破って改革に突き進んだ小泉氏の手法が、奇矯な振る舞いから「うつけ殿」と呼ばれた革命児・信長と重なるのだろう。

 今思えば、あの夜の小泉氏も信長の趣があった。

 2003年10月10日、衆院解散に踏み切った小泉氏は、翌日未明まで民放の報道番組に出演後、東京・高輪にある行きつけのラーメン店に入った。私を含め、各社の総理番記者が店先で待っていると、小泉氏は珍しく中へ招き入れてくれた。

 ほろ酔い加減でギョーザをつつく小泉氏に、私が決戦前夜の心境を尋ねると、「命まで取られるわけじゃないからなあ」と笑い、上機嫌で「人間五十年――」と、幸若舞「敦盛」の一節を口ずさんでみせた。おどけながらも衆院選への覚悟を秘めた小泉氏の表情は、桶狭間の戦いに臨んで敦盛を舞った信長を彷彿ほうふつさせた。

 その小泉氏が最近、テレビやラジオで盛んに「ポスト安倍」の人物評を披露している。ワンフレーズで鳴らした小泉氏らしく、発信力への注文が目立つ。

 まずは、石破茂・元自民党幹事長。62歳。

 昨年9月の自民党総裁選で安倍首相と一騎打ちを演じ、敗れはしたものの、存在感を示した。小泉氏も「今のところ第1候補」と認める。だが、説明調のスピーチには「歯切れが悪い」とバッサリ。「政治家で大事なのは、できるだけ短く、わかりやすく。まず結論から言って、その結論に至った理由を後から言った方がいい」とアドバイスを送る。

 次に、岸田文雄・自民党政調会長。61歳。

 幼少期はニューヨークに住み、その後は東京の永田町小学校、麹町中学校、開成高校と典型的なエリートコースを歩んできた。政策通で首相の信頼も厚いが、小泉氏は「頭のいい人は話が分かりやすいかというと、そうでもない」と手厳しい。優柔不断との岸田評には「これからは、はっきり短く言おうと思った方がいい」と助言する。

 総裁3選を果たした首相は2021年9月までの最終任期に入ったが、後継候補は決め手を欠き、自民党内では「安倍4選論」も頭をもたげてきた。総裁任期は党則で連続3期9年までだが、1986年に衆参同日選で大勝した中曽根康弘・元首相の総裁任期は、特例で1年延長された。首相の任期が延びるようなことがあれば、世代交代が加速する可能性もある。石破氏や岸田氏のライバルとなるのは、37歳の小泉進次郎氏ら若手だ。

 小泉氏は次男の進次郎氏について「政治家だから、できれば総理になりたいという気持ちはあると思う」と語る。「進次郎には、どんな会合でもあいさつは3分以内に収めろと言っている。3分以上は長い」と直伝のワンフレーズ指南も施しているようだ。

 そんな進次郎氏の政治の原点は、大学時代に小泉氏が首相になったことだという。「息子の私も勝つことはないだろうと思っていた総裁選」を制し、派閥の論理を覆す国民世論のうねりを目の当たりにしたことが、政治を志すきっかけとなったと語っている。小泉氏が2001年の総裁選で本命視された橋本竜太郎・元首相に圧勝したことも、小大名だった信長が「海道一の弓取り」とうたわれた今川義元を桶狭間で破ったことと似ている。

 首相の総裁任期満了まで2年半。一寸先は闇の政界で、戦国時代さながらの群雄割拠から抜け出すのは誰だろうか。

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