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わかやま新報 2018年12月09日 06時55分[社会]
ご参考URL=http://www.wakayamashimpo.co.jp/2018/12/20181209_83423.html

     社会福祉の向上へ 「竹の里園」開園20年

 社会福祉法人「浩和会」が運営する特別養護老人ホーム「竹の里園」(和歌山市明王子)が開園20周年を迎えた。代々農家だった事務長の上野浩司さん(85)が1000坪以上の広大な農地を活用して1998年に開園した。

 専業農家をしていた上野さんは40代の頃、弟の立ち上げた建設会社に勤めた。時代は高度経済成長期。上野さんも数十億円の仕事を受注するなど右肩上がりな時代の風潮を感じる一方で、これまでとは違う少子高齢化や核家族化など社会の変容が気に掛かっていた。「社会のために自分にできることはないか」。先祖代々伝わる広大な水田だったが、跡を継ぐ人もいない。「活用し、社会の役に立てよう」と考えた。財産を全てはたき、施設建設に充てた。

 「尊い人の命を預かる場所。家族や入所者の皆さんが安心して喜んでもらえる施設でなければ」の一心で取り組み、今ではショートステイやデイサービス、グループホームなど介護事業所として業務は多岐にわたっている。

 開園時は65歳だった上野さんも、施設とともに年を重ねた。「年を取れば隠居するという人が多いが、『生涯現役』を信条にやってきた。いろんな方にお世話になり、こうして元気でいられることが何にも代えがたい恩恵です」と話した。
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西日本新聞朝刊 2018/12/08付
ご参考URL=https://www.nishinippon.co.jp/nnp/weather_vane/article/471619/

      老いは「悪」じゃない 編集委員 井上 真由美

 車椅子に座って朗らかに話してくれた姿が、印象に残っている。11月末に94歳で亡くなった女優、赤木春恵さん。5年前の秋、映画「ペコロスの母に会いに行く」の公開を前に、東京のご自宅でインタビューした。

 「世界最高齢での映画初主演女優」として、ギネス世界記録に認定された作品。少しずつ認知症が進む主人公みつえさんをリアルに演じる姿を覚えている方も多いと思う。お会いした赤木さんは役柄のままの穏やかな笑顔で、認知症の実母を介護した経験など、ゆっくり語ってくれた。

 何よりも心に刻まれているのは、自らの老いを一切隠さない潔さだった。

 既に「迷惑を掛けたくない」と、やり直しの利かない舞台からの引退を88歳で表明していた。坂の多い長崎ロケ中はスタッフが4人掛かりで車椅子を抱えてくれたこと、補聴器を着けているから「大きな声で話して」と頼むこと、あっけらかんと話してくれた。それが「後ろ指をさされることではなく、自然」だと。

 インタビューの際はきれいにお化粧されていて、その時89歳という年齢を考えれば、とびきり若々しく美しかったのは言うまでもない。人前に立つ女優だから老いゆく自分に葛藤もあったと思う。それでも、あえて老いをさらす姿に凛(りん)とした信念を感じた。

 「人生100年時代」「生涯現役時代」などと、年老いても若く元気でいることが礼賛、推奨される世の中。70歳への定年延長、健康管理に努めれば医療費負担が軽減される「健康ゴールド免許」なるものも取り沙汰されている。

 福祉や医療分野を担当する私自身、介護予防などいつまでも元気に-を目指す記事を書いてきた。高齢者に取材する際、年齢を聞いた後、反射的に「お若いですね」と褒め言葉のつもりで言っていた。

 そんな流れに、違和感もある。いつまでも若く元気でいなくちゃいけないのか、と。老いて心身の自由が利かなくなるのは悪いことか、と。もちろん健康づくりの努力は大切だが、最近、五十肩がひどく記憶力も落ちて自身の老化を痛感するだけに、「美魔女」への劣等感も入り交じり、違和感は強まっている。

 赤木さん演じるみつえさんは「ボケるとも悪か事ばかりじゃなかかもしれん」と言った。赤木さんが93歳で出したエッセー「あせらず、たゆまず、ゆっくりと。」(扶桑社)にはこうある。「老いることも悪いことばかりじゃない」「老いることのなかにも間違いなく喜びがあると…」

 遅咲きの大女優の言葉に励まされている。 

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