日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
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岩手日報 公式サイト 2018.10.10
ご参考URL=https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/10/10/25402

      (論説)生涯現役社会 「働け」だけでは寂しい
 
 「生涯働けど働けど社会」になるのではないか。政府の未来投資会議が、現行65歳までの継続雇用の義務付けを、70歳まで引き上げる方向で本格的な検討を始めたことに、そんな疑念が拭えない。

 「生涯現役社会の実現に向け、多様な就業機会を提供する」と意気込む安倍晋三首相。早ければ2020年の通常国会に、高年齢者雇用安定法改正案を提出する。公的年金の受給開始時期の選択幅も、現行の70歳から70歳超に拡大する方針だ。

 少子高齢化が進む中、元気な高齢者が長く働ける環境を整えることで、労働力不足を補い、社会保障制度の安定も図る狙いがある。

 晴天に恵まれた「体育の日」の8日、各地のイベントでスポーツを楽しむ高齢者の姿が目立った。スポーツ庁の17年度調査によると、70代の体力は男女ともに過去最高水準。「働いている方が元気でいられる」と雇用延長を歓迎する向きもあるだろう。

 だが、価値観は人それぞれ。定年後は趣味を楽しみたい人、ボランティアで地域貢献を志す人もいる。企業にとって、定年延長の義務付けは人件費の増大につながる側面もあるだけに、慎重な議論が求められる。

 併せて、働き手の中心である64歳までの現役世代の中にも、支援の手が差し伸べられないため、働きたくても働けず孤立している人が多い現状も直視する必要がある。

 内閣府の推計によると、15~39歳のひきこもりは54万人。かつて若者の問題とされてきたが、就労支援施策の乏しさもあり、長期化、高年齢化が進む。家族や専門家が長らく支援の必要性を訴え、国はようやく本年度、40~59歳の実態把握に乗り出した。

 生活保護受給者が増加する中、15年度からは生活困窮者自立支援制度がスタート。一部の先進的自治体は包括的な相談支援体制を構築して就労につなげているが、全国的な取り組みは道半ばだ。

 注目されるのが、日本学術会議の社会福祉学分科会が先月公表した提言「社会的つながりが弱い人への支援のあり方について」。政府の再分配政策がうまく機能していないため、本来、人々の社会参加を促すための社会保障政策が、逆に分断を助長していると厳しく指摘している。

 解決策として、既存の市町村社会福祉行政などを再編成し、消防署、警察署のように「福祉署」を創設するなど、大胆に提言している。

 高齢者の人生も、社会保障制度の安定に向けた政府の解決策も、「働け」だけでは寂しい。日本学術会議の提言も踏まえ、多様な生き方を支えるための施策の充実に向けた議論が求められる。

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