日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
       NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ  活 動 で 
                ご  支  援  く  だ  さ  る   会  員  皆  様


神戸新聞 NEXT:2018/4/25 14:20
参考URL=https://kobe-np.co.jp/news/sougou/201804/0011196569.shtml

      結婚38年 妻の生きた証し、理髪店守る JR脱線

 大きな屋根に覆われ、姿を変えた事故現場に警笛が響く。尼崎JR脱線事故から13年の朝。雨が上がった惨事の現場で、追悼慰霊式の会場で、遺族や負傷者らが静かに目を閉じた。変わらぬ思いがこみ上げてくる。「会いたい」。優しい笑顔を思い出し、また問う。「なぜ」-。昨年末には新幹線の台車に破断寸前の亀裂が見つかった。追悼の祈り、生への慈しみ、安全への願いが現場を包んだ。

 夫婦働きづめで駆け抜けた結婚生活は38年で途絶えた。それでも事故後、ひたすら前を向いて歩いてきた。尼崎JR脱線事故で妻節香(せつか)さん=当時(63)=を失った兵庫県西宮市の西野道晴さん(78)は25日、長男勝善さん(48)と事故現場を訪れ、静かに手を合わせた。

 夫婦が西宮の北部に理髪店を構えたのは1985年。それまで尼崎市や大阪府枚方市にも出店したが、宅地開発が進むニュータウンで「まっさらから挑戦したい」との思いからだった。

 節香さんはカラーリングやパーマが得意で、店の大黒柱だった。趣味の山登りや健康法などおしゃべりの引き出しも多く、市外から訪れる女性客も多かった。「努力家で情熱的な人だった」。午後10時まで順番待ちがやまない日もあった。

 定休日の晴れた朝。大阪に1人で買い物に行く途中だった。バスが渋滞に捕まり、最寄りの西宮名塩駅への到着が遅れた。その後、乗り換えた快速電車で事故に巻き込まれた。

 店舗は事故後も、何も変わらない。節香さんのはさみも変わらず、そのままだ。「嫁さんははさみにこだわっていたから」。西野さんが毎日、布で拭いて手入れをしている。

 5年ほど前に勝善さんに店の経営を譲った。それでも「家内の生きた証しそのものがこの店やから」と、はさみを手放さず、生涯現役を誓う。「あんた、店いても暇してるんちゃう?」と激励が聞こえるという。

 命日の朝。「子どもや孫のことを心配しているのでは」。そして、節香さんにそっとつぶやく。「元気でいつも頑張っているよ」(竹本拓也、篠原拓真)

コメント