alterna誌:企業のCSR Risk 次はPlastic
2018年4月7日 お仕事日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
Alterna誌森編集長です。いつもお読み頂き、有難うございます。
企業がCSRに取り組む大きな理由の一つは、通常では見えにくい社会的リスクが見えてくることです。通常のビジネスでは気づかないことが、NGO/NPOと対話の場を持つなど、社会との接点を持つことで見えてくることがあるのです。その代表格はパーム油生産による児童労働や森林破壊の問題であり、ほかにもLGBTイシューによる企業リスク、バングラデシュなど発展途上国への縫製委託で起きる人権リスクなど枚挙に暇がありません。
いま、グローバル規模で関心が高まっているのが「プラスチック」です。ストロー、レジ袋、ペットボトルなどリサイクルされないプラスチックゴミが海を漂っている間に砕けて細かくなった5mm以下の「マイクロプラスチック」を海鳥や魚が食べ、海洋生態系に多大な影響が出ています。直径1mm以下の超微細「プラスチックマイクロビーズ」は下水処理施設のフィルターをくぐり抜けてしまい、海への流出を防ぐのが困難なのです。ハネムーンなどで日本人にも人気の、モルジブの海岸がプラスチック製品で埋め尽くされています。埋立地から流れ出したり、ポイ捨てされたものが、流れ着いています。
また、海の中で多くの命を育むサンゴ礁。サンゴにも、プラスチックごみが引っかかっているケースが見つかっています。波の力がプラスチックごみに加わり、サンゴが引っ張られときには折れてしまったりすることもあるそうです。ドイツのヘルゴラント島には、シロカツオドリの一大営巣地があります。巣をよく見ると、自然のものではなくて、海底をズズっと引っ張って漁をする、底引き網が岩などに引っかかって破損しないようにつけるプラスチック製のロープが混ざっていました。
ちぎれたロープが海を漂い、巣作りの素材を探す海鳥は、枝などと勘違いし巣に持ち帰ってしまうのです。ロープに絡まって命を落とすシロカツオドリが多く確認されています。海の動物のなかでは、ウミガメ、アザラシ、アシカといった、好奇心が強く遊ぶのが大好きな動物たちが、プラスチックごみにからまってしまい、命を落としたり、ケガをするなどの影響を特に受けているといわれています。
このままのペースでプラスチックごみを排出していくと、2050年には重量に換算して、海には「魚よりもプラスチックごみの方が多くなる」という衝撃のレポートが昨年発表され、プラスチックの世界総生産は過去50年で20倍に増加し、2014年の世界総生産は3億1,100万トン、海の中ではプラスチックと魚の割合が、1対5だったそうです。
海に流れ出ていくプラスチックごみの約8割が、テイクアウト用のコーヒーカップのフタや、お弁当容器、レジ袋などの使い捨てのプラスチックという調査もあります。プラスチックごみは水深何千メートルの海底からも見つかっていて、見つからない海域はないと言われています。(「花王が脱マイクロビーズ!海がプラスチックでいっぱいになる前に」=グリーンピース・ジャパンサイト)その中で、英国マクドナルドは3月28日、国内に1300店舗でプラスチックのストローの提供を止め、試験的に紙のストローを使用すると発表しました。
■McDonald’s Is the Latest Restaurant to Ban Plastic Straws(英文記事)
一方、米ワシントン州シアトル市は2018年7月から、プラスチック製ストローやフォーク、スプーンの提供を禁止することになりました。レジ袋については小売業に対し、あらゆるプラスチックバッグ(日本でいうビニール袋)の提供を禁止。大型の紙袋についても5セントの課金を求めています。プラスチックを巡る動きは、この10年、次第にうねりが高まっています。
■ ケニアで世界一厳しいポリ袋禁止法が施行、最大4年の禁錮刑(2017年7月)
■ 台湾、2018年からレジ袋の提供禁止範囲拡大へ
■ 1日5億本、「ストローいりません」が米国で拡大中
■ 米カリフォルニア州でレジ袋禁止法が成立、製造業界は反発
■ 大都市では初。サンフランシスコがペットボトル飲料水販売を禁止
■ 「アウトサイド・イン」のチャンスに
さて、日本では今後、どのような動きになるでしょうか。特にプラスチック製造・販売関連の企業にとっては、この流れは本業にとって大きな「逆風」に映るかもしれません。しかし、企業にとっては、こうした社会的課題を新たな製品やサービスなどビジネスで解決できるチャンスでもあるのです。SDGsのビジネステキスト的な存在である「SDGsコンパス」では、こうした社会課題を起点にしたビジネス創出を「アウトサイド・イン」として奨励しています。
例えば、ストローの原料を石油由来以外の原料のものや、リサイクル可能なものに変える。ストローを完全回収の上、ペレットに加工してサーマルリサイクル(燃焼)する。あるいは、ストローを使わなくても心地よくドリンクが飲める新たなツールを開発するーーなどが考えられます。
■ 2020年の東京オリンピックで批判される可能性も
日本では急激な環境規制を国民は望んでいないと高を括っている方もおられるでしょう。しかし、2020年の東京オリンピックで来日した外国人が日本のプラスチック製品やペットボトルを見て、国際的な批判につながる可能性は否定できません。
また、日本企業がグローバル展開をしているのであれば、あるいはその下請け企業であるのであれば、海外ビジネスにおいてプラスチックをCSRリスクと認識できないことは、大きなビジネス上のリスクを抱えることになります。
企業がCSRに取り組むことで、こうした事前を早期に察知し、早めに対応し、自社ビジネスのリスクを低減できるチャンスが生まれるのです。こうしたCSRリスクを「知っていること」と「知らないこと」は雲泥の差になります。あなたの会社は大丈夫でしょうか。
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株式会社オルタナ 代表取締役・「オルタナ」編集長 森 摂
東京都目黒区駒場1-26-10-304 tel: 03-6407-0266
武蔵野大学大学院・環境研究科客員教授
一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事
特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長
「サステナブル・ブランド国際会議」プロデューサー
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NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
Alterna誌森編集長です。いつもお読み頂き、有難うございます。
企業がCSRに取り組む大きな理由の一つは、通常では見えにくい社会的リスクが見えてくることです。通常のビジネスでは気づかないことが、NGO/NPOと対話の場を持つなど、社会との接点を持つことで見えてくることがあるのです。その代表格はパーム油生産による児童労働や森林破壊の問題であり、ほかにもLGBTイシューによる企業リスク、バングラデシュなど発展途上国への縫製委託で起きる人権リスクなど枚挙に暇がありません。
いま、グローバル規模で関心が高まっているのが「プラスチック」です。ストロー、レジ袋、ペットボトルなどリサイクルされないプラスチックゴミが海を漂っている間に砕けて細かくなった5mm以下の「マイクロプラスチック」を海鳥や魚が食べ、海洋生態系に多大な影響が出ています。直径1mm以下の超微細「プラスチックマイクロビーズ」は下水処理施設のフィルターをくぐり抜けてしまい、海への流出を防ぐのが困難なのです。ハネムーンなどで日本人にも人気の、モルジブの海岸がプラスチック製品で埋め尽くされています。埋立地から流れ出したり、ポイ捨てされたものが、流れ着いています。
また、海の中で多くの命を育むサンゴ礁。サンゴにも、プラスチックごみが引っかかっているケースが見つかっています。波の力がプラスチックごみに加わり、サンゴが引っ張られときには折れてしまったりすることもあるそうです。ドイツのヘルゴラント島には、シロカツオドリの一大営巣地があります。巣をよく見ると、自然のものではなくて、海底をズズっと引っ張って漁をする、底引き網が岩などに引っかかって破損しないようにつけるプラスチック製のロープが混ざっていました。
ちぎれたロープが海を漂い、巣作りの素材を探す海鳥は、枝などと勘違いし巣に持ち帰ってしまうのです。ロープに絡まって命を落とすシロカツオドリが多く確認されています。海の動物のなかでは、ウミガメ、アザラシ、アシカといった、好奇心が強く遊ぶのが大好きな動物たちが、プラスチックごみにからまってしまい、命を落としたり、ケガをするなどの影響を特に受けているといわれています。
このままのペースでプラスチックごみを排出していくと、2050年には重量に換算して、海には「魚よりもプラスチックごみの方が多くなる」という衝撃のレポートが昨年発表され、プラスチックの世界総生産は過去50年で20倍に増加し、2014年の世界総生産は3億1,100万トン、海の中ではプラスチックと魚の割合が、1対5だったそうです。
海に流れ出ていくプラスチックごみの約8割が、テイクアウト用のコーヒーカップのフタや、お弁当容器、レジ袋などの使い捨てのプラスチックという調査もあります。プラスチックごみは水深何千メートルの海底からも見つかっていて、見つからない海域はないと言われています。(「花王が脱マイクロビーズ!海がプラスチックでいっぱいになる前に」=グリーンピース・ジャパンサイト)その中で、英国マクドナルドは3月28日、国内に1300店舗でプラスチックのストローの提供を止め、試験的に紙のストローを使用すると発表しました。
■McDonald’s Is the Latest Restaurant to Ban Plastic Straws(英文記事)
一方、米ワシントン州シアトル市は2018年7月から、プラスチック製ストローやフォーク、スプーンの提供を禁止することになりました。レジ袋については小売業に対し、あらゆるプラスチックバッグ(日本でいうビニール袋)の提供を禁止。大型の紙袋についても5セントの課金を求めています。プラスチックを巡る動きは、この10年、次第にうねりが高まっています。
■ ケニアで世界一厳しいポリ袋禁止法が施行、最大4年の禁錮刑(2017年7月)
■ 台湾、2018年からレジ袋の提供禁止範囲拡大へ
■ 1日5億本、「ストローいりません」が米国で拡大中
■ 米カリフォルニア州でレジ袋禁止法が成立、製造業界は反発
■ 大都市では初。サンフランシスコがペットボトル飲料水販売を禁止
■ 「アウトサイド・イン」のチャンスに
さて、日本では今後、どのような動きになるでしょうか。特にプラスチック製造・販売関連の企業にとっては、この流れは本業にとって大きな「逆風」に映るかもしれません。しかし、企業にとっては、こうした社会的課題を新たな製品やサービスなどビジネスで解決できるチャンスでもあるのです。SDGsのビジネステキスト的な存在である「SDGsコンパス」では、こうした社会課題を起点にしたビジネス創出を「アウトサイド・イン」として奨励しています。
例えば、ストローの原料を石油由来以外の原料のものや、リサイクル可能なものに変える。ストローを完全回収の上、ペレットに加工してサーマルリサイクル(燃焼)する。あるいは、ストローを使わなくても心地よくドリンクが飲める新たなツールを開発するーーなどが考えられます。
■ 2020年の東京オリンピックで批判される可能性も
日本では急激な環境規制を国民は望んでいないと高を括っている方もおられるでしょう。しかし、2020年の東京オリンピックで来日した外国人が日本のプラスチック製品やペットボトルを見て、国際的な批判につながる可能性は否定できません。
また、日本企業がグローバル展開をしているのであれば、あるいはその下請け企業であるのであれば、海外ビジネスにおいてプラスチックをCSRリスクと認識できないことは、大きなビジネス上のリスクを抱えることになります。
企業がCSRに取り組むことで、こうした事前を早期に察知し、早めに対応し、自社ビジネスのリスクを低減できるチャンスが生まれるのです。こうしたCSRリスクを「知っていること」と「知らないこと」は雲泥の差になります。あなたの会社は大丈夫でしょうか。
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株式会社オルタナ 代表取締役・「オルタナ」編集長 森 摂
東京都目黒区駒場1-26-10-304 tel: 03-6407-0266
武蔵野大学大学院・環境研究科客員教授
一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事
特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長
「サステナブル・ブランド国際会議」プロデューサー
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