日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
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 いつも何かとお世話になります。本日付日経新聞朝刊オピニオンの「核心」欄に、フィナンシャルタイムズ紙チーフ・エコノミクス・コメンテーターのマーティン・ウルフ氏『民主主義 立て直すには』の論説をご参考までに下記ご紹介いたします。『生涯現役プロデューサー』仮登録皆様の本件関連ご意見をお待ちしています。
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【 日本経済新聞 9/25:Opinion/ 核 心 】
          民 主 主 義  立 て 直 す に は
                                   マーティン・ウルフ
  民主主義が後退している。自由なグローバル経済への信認も低下している。民主主義と資本主義は本来、“ 婚姻関係 ” にあるが、何度も危険な状態に陥った。今も厳しい局面に見舞われている。
  米人権団体フリーダムハウスは最新の年次報告書で、2016年まで11年連続で世界の民主主義が後退したと指摘した。
  米国でのトランプ大統領の誕生は、自由貿易への反発の高まりを示すものだ。世界金融危機の後、米ウォール街や、国境を越えて自由に流れるマネーに対する反感も強く、人の自由な移動を制限するような動きも各地で見られる。
  米研究機関が世界の民主主義の広がりを調査した「ポリティ-4データーベース」によると、1800年時点ではほぼすべての国が独裁政権だったが、2016年には民主政権が97と100近くに達した。一方、独裁政権は1977年に89まで増えた後、減少に転じている。ただ90年以降、約50カ国が政治的に無秩序で不安定と評価されているのは残念なことだ。
  民主国家の割合を国内総生産(GDP)に占める貿易額の比率と並べて比較することもできる(貿易額のGDP比は、人や資本の移動といった他のグローバル化指標とも強い相関性がある)。
  歴史を見ると、民主化とグローバル化はほぼ相関関係にあることがわかる。要は19世紀の産業革命が政治革命をもたらし、独裁主義から民主主義への移行を促した。逆に、反グローバル化は反民主化と連動している。
  これは当然だろう。米ハーバード大学のベンジャミン・フリードマン教授が主張するように、民主主義は豊かな時代に進展するが、貧困化では後退する。実際、1820年以降、世界の一人当たりの平均実収入は13倍に増え、高所得国ではそれを上回った。経済発展に伴い国民の教育が必要になり、国民を戦争に動員しようとすれば、政治的に多様な考え方を包摂することが求められた。
  逆に金融危機は貧困や不安、そして怒りを引き起こした。民主主義には、勝者が敗者を破滅に追い込むために権力を行使することはないという勝者への信頼が欠かせない。しかし、負の感情はそうした信頼を消し去ってしまう。
  民主主義と資本主義は関連が実証されているだけではない。民主国家では全ての人が政治の意思決定に加わり、資本主義の下では誰もが自由に市場を利用できることが前提になるという意味で、ともに平等の理念に基づいている。
  だが大きな違いもある。民主主義には国民の連帯が必要だが、資本家たちは愛国主義には関心がない。民主主義では全ての市民に発言権があるはずだが、資本主義では富める者が最も大きな発言力を持つ。有権者はある程度の経済的安定を求めるが、資本主義には好不況の循環が付きものだ。
  すべての市場経済が民主的でグローバル化されているべきだなどと主張するつもりはない。安定した民主国家にはある程度、開放された市場経済が根付いているいるものだと言いたいのだ。複雑な社会の動きに対処できる方法は目下、他には見当たらない。今、求められるのは民主主義を後押しするよう資本主義を抑え、資本主義が全ての人に恩恵をもたらすよう民主主義を守ることだ。我々は現在、難局にある両者の婚姻関係を修復しなければならない。

        

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