山陽新聞Digital:生涯現役応援センター
2016年12月1日 お仕事山陽新聞Digital URL=http://www.sanyonews.jp/article/454402
活 動 提 供 し 「 生 涯 現 役 」 を 後 押 し
岡 山 の セ ン タ ー 開 設 1 年 、
仲 間 づ く り も 進 む
第一線を退いても社会に役立ちたい-。意欲ある60代以上に活動の場を提供する岡山市の「生涯現役応援センター」が、ひまわり福祉会館(同市北区大供)に開設されて1年余が過ぎました。社会参加を希望するシニアと、受け入れ先の施設や企業をマッチングし、これまでに155件が“成約”。登録者同士の交流、仲間づくりも広がるなど、成果を挙げています。
「社会の中に居場所を見つけることができました。生活に張りが出て、毎日が充実しています」。退職直後の昨年5月、家族の仕事の関係で岡山市に越してきた竹内則子さん(61)。転居後数カ月は自由を謳歌(おうか)していましたが、知人がおらず、孤独感が募りました。「誰にも必要とされない寂しさから『この先ずっとこんな生活が続くなんて耐えられない、なんとかしたい』と思っていた」といいます。
市の広報紙でセンターの案内を目にしたのは、そんな矢先でした。すぐセンターに登録。長年、音楽に関わる仕事をしていた経験をもとに、市内の高齢者施設で行われる音楽療法のサポートや、公民館などで開かれる行事でピアノ伴奏をするなど週2回程度、ボランティアに励むようになりました。竹内さんは「『また歌を歌って』と言われたり、施設の職員に感謝されたりすると、すごくうれしくて、こちらがお礼を言いたいくらい。“定年うつ”も吹き飛びました」と喜んでいます。
■ □ ■
昨年9月末に設立されたセンターの大きな目標は、自立して生活ができる「健康寿命」を延ばすことです。厚生労働省の研究班の調査によると、市の健康寿命は男性69.0歳、女性は72.7歳と全国平均(男性70.4歳、女性73.6歳)より低く、男女とも平均寿命とは10年以上開いています。少子高齢化が進む中、現役世代をフォローするとともに、長年培ってきた知識や経験を生かして社会貢献することによって心と体の健康を維持してもらう―というビジョンを描いています。運営は、市から事業委託された市社会福祉協議会が担っています。
活動を希望するシニアは、まず電話で面談を予約。登録カードに職歴や特技などを書き込み、そのカードをもとに、市社協のコーディネーターがその場で活動の提案をします。「草取りといった環境整備やレクリエーションの手伝いなど何かしらできることはあります。面談を通じてその人に合った活動を提供するようにしています」と、コーディネーターの木村永里子さん(41)。
受け入れ先は115件(10月末現在)あり、高齢者・子育て施設など福祉分野がほとんどを占めています。登録者は60~90代の125人。 “仕事”は、高齢者の話し相手や買い物の見守り、将棋・囲碁の相手のほか、保育園や幼稚園では、洗濯、読み聞かせ、英語を教えたりとさまざま。無償が8割を占めますが、外国人技能実習生の社会人教育指導(時給1200円)、高齢者施設で食事の配膳手伝い(2時間1500円)といった有償も含まれています。
■ □ ■
センターは3カ月に1回、登録者が集う交流会を開いたり、区ごとに年間4回、健康などをテーマにしたセミナーを開催。その中で生まれた触れ合いから、配偶者と死別した独身者らでつくるおひとりさまの会「サンフラワー」が10月に発足しました。約20人が月2回、センターがあるひまわり福祉会館に集まり、家電製品の知識、落語、和服の着付けなど特技を実演したり、互いの身の上を話し合ったり…。2年前に妻を亡くした世話人の千房新太郎さん(73)=岡山市=は「ボランティアで癒やされ、この会で同じような境遇の新しい仲間に出会えた。人に会って話をすることで社会とつながっていると実感します」と言います。
シニアが活躍する場としてはシルバー人材センターも知られていますが、こちらは会費や入会金が必要で、仕事はすべて有償です。これに対し、応援センターは登録無料。ボランティアや就業の相談も受け付けており、木村さんは「長い老後をどう過ごすかが課題。週1回、月1回でもいいから何か活動することで生き方が変わっている。さらに力を入れて、シニアの地域デビューを後押ししていきたい」と話しています。
活 動 提 供 し 「 生 涯 現 役 」 を 後 押 し
岡 山 の セ ン タ ー 開 設 1 年 、
仲 間 づ く り も 進 む
第一線を退いても社会に役立ちたい-。意欲ある60代以上に活動の場を提供する岡山市の「生涯現役応援センター」が、ひまわり福祉会館(同市北区大供)に開設されて1年余が過ぎました。社会参加を希望するシニアと、受け入れ先の施設や企業をマッチングし、これまでに155件が“成約”。登録者同士の交流、仲間づくりも広がるなど、成果を挙げています。
「社会の中に居場所を見つけることができました。生活に張りが出て、毎日が充実しています」。退職直後の昨年5月、家族の仕事の関係で岡山市に越してきた竹内則子さん(61)。転居後数カ月は自由を謳歌(おうか)していましたが、知人がおらず、孤独感が募りました。「誰にも必要とされない寂しさから『この先ずっとこんな生活が続くなんて耐えられない、なんとかしたい』と思っていた」といいます。
市の広報紙でセンターの案内を目にしたのは、そんな矢先でした。すぐセンターに登録。長年、音楽に関わる仕事をしていた経験をもとに、市内の高齢者施設で行われる音楽療法のサポートや、公民館などで開かれる行事でピアノ伴奏をするなど週2回程度、ボランティアに励むようになりました。竹内さんは「『また歌を歌って』と言われたり、施設の職員に感謝されたりすると、すごくうれしくて、こちらがお礼を言いたいくらい。“定年うつ”も吹き飛びました」と喜んでいます。
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昨年9月末に設立されたセンターの大きな目標は、自立して生活ができる「健康寿命」を延ばすことです。厚生労働省の研究班の調査によると、市の健康寿命は男性69.0歳、女性は72.7歳と全国平均(男性70.4歳、女性73.6歳)より低く、男女とも平均寿命とは10年以上開いています。少子高齢化が進む中、現役世代をフォローするとともに、長年培ってきた知識や経験を生かして社会貢献することによって心と体の健康を維持してもらう―というビジョンを描いています。運営は、市から事業委託された市社会福祉協議会が担っています。
活動を希望するシニアは、まず電話で面談を予約。登録カードに職歴や特技などを書き込み、そのカードをもとに、市社協のコーディネーターがその場で活動の提案をします。「草取りといった環境整備やレクリエーションの手伝いなど何かしらできることはあります。面談を通じてその人に合った活動を提供するようにしています」と、コーディネーターの木村永里子さん(41)。
受け入れ先は115件(10月末現在)あり、高齢者・子育て施設など福祉分野がほとんどを占めています。登録者は60~90代の125人。 “仕事”は、高齢者の話し相手や買い物の見守り、将棋・囲碁の相手のほか、保育園や幼稚園では、洗濯、読み聞かせ、英語を教えたりとさまざま。無償が8割を占めますが、外国人技能実習生の社会人教育指導(時給1200円)、高齢者施設で食事の配膳手伝い(2時間1500円)といった有償も含まれています。
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センターは3カ月に1回、登録者が集う交流会を開いたり、区ごとに年間4回、健康などをテーマにしたセミナーを開催。その中で生まれた触れ合いから、配偶者と死別した独身者らでつくるおひとりさまの会「サンフラワー」が10月に発足しました。約20人が月2回、センターがあるひまわり福祉会館に集まり、家電製品の知識、落語、和服の着付けなど特技を実演したり、互いの身の上を話し合ったり…。2年前に妻を亡くした世話人の千房新太郎さん(73)=岡山市=は「ボランティアで癒やされ、この会で同じような境遇の新しい仲間に出会えた。人に会って話をすることで社会とつながっていると実感します」と言います。
シニアが活躍する場としてはシルバー人材センターも知られていますが、こちらは会費や入会金が必要で、仕事はすべて有償です。これに対し、応援センターは登録無料。ボランティアや就業の相談も受け付けており、木村さんは「長い老後をどう過ごすかが課題。週1回、月1回でもいいから何か活動することで生き方が変わっている。さらに力を入れて、シニアの地域デビューを後押ししていきたい」と話しています。
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