読売新聞(YOMIURI ONLINE)社説:2016年10月16日 06時18分
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  高 齢 者 雇 用 対 策 
        「 生 涯 現 役 」 の 環 境 を 整 え よ う

  高齢化と人口減が進む中、社会の活力を維持するためには、高齢者が能力や経験を生かして、十分に活躍できる環境の整備が大切である。

  2016年版の厚生労働白書が公表された。「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」がテーマだ。意欲ある高齢者が働き続けられる「生涯現役社会」の実現に向けて、雇用対策の強化を打ち出している。

  総人口に占める65歳以上の割合は27%に達した。60年には40%になる見込みだ。労働力不足を補い、社会保障の支え手を確保する上で高齢者の就労促進は極めて重要である。高齢者一人一人の生活の安定や、健康作りにも役立つ。

  60歳以上の7割近くが、65歳を超えても働きたいと望んでいる。国際的に見ても、日本の高齢者は就労意欲が高い。

  13年4月施行の改正高年齢者雇用安定法は、希望する社員を65歳まで雇用するよう企業に義務づけた。60歳代前半の就業率は、男性で74%まで上昇した。

  ただ、大半の企業は60歳定年後の再雇用で対応している。パートなどの非正規雇用とする場合が多い。定年前と同じ仕事でも賃金が大幅に下がる例や、経験と無関係な単純業務への配置も目立つ。

  働きや能力に見合わぬ処遇では意欲が低下し、生産性も上がらない。急激な待遇悪化は問題だ。

  60歳定年が前提の年功賃金をそのまま延長するのは無理がある。企業は、若い時から65歳までの一貫した人事管理や賃金体系に見直す必要がある。年功的要素を減らし、より能力や成果に応じた人材活用や処遇にするのも一案だ。

  労働者側も、長く働くためには、早くからキャリア設計を考え、能力向上を図ることが欠かせない。企業内の研修や、自発的な職業訓練などの機会を拡充させたい。

  65歳以降の就労先の確保も課題である。就職を希望しながら、働けずにいる65歳以上は200万人を超える。政府は、65歳以上の継続雇用や新規採用に取り組む企業への支援を強化すべきだ。

  全国の主要ハローワークでは、「生涯現役支援窓口」を設け、65歳以上の再就職支援や求人開拓を重点的に行っている。窓口の増設は、有効な対策だろう。

  高齢者は、体力や経済力の個人差が大きく、就労ニーズは多様だ。自宅近くで働きたい人も多い。自治体が経済団体や社会福祉協議会と連携し、介護や保育など地域の課題に合った活躍の場を広げていくことが求められよう。

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