日経トレンディ:いいねの写真をiPhoneで
2016年8月27日 お仕事トレンド・ウォッチ from日経トレンディ
「いいね」と思われる写真をiPhoneで撮るコツは
若手の写真家が解説
新しい国民の祝日として、今年から8月11日に「山の日」が加わったのはご存じの通り。ちょうどお盆休みに連なるタイミングだけに、12日の金曜日に休みを取得して長い休暇を取った人も少なくないのではないか。この時期は、レジャーや旅行の写真を撮ったりSNSに投稿する機会が増えるが、人に写真を公開するならば「センスがいいね」と思われたいのは誰しも同じだろう。
山の日を目前にした2016年8月10日、iPhoneでの撮影テクニックを紹介した書籍「LIFE and iPhone」を執筆した建築家の彦根 明さんと写真家の彦根藍矢さん親子が、「iPhoneで楽しむフォトグラフィー」をテーマにアップルストア銀座で講演した。「ちょっとしたテクニックがあれば、iPhoneを使って誰でもセンスあふれる写真が撮れる」とアドバイスした。
料理撮影の意外な厄介者がLED照明、色味の補正が肝心
登壇した彦根 明さんは、仕事で建物の写真を撮影する機会が多かった。だが、普段使っているiPhoneで目にしたものを撮影していったところ、たまたま仕事で一緒になった編集者の目に留まり、写真家として活躍する藍矢さんとの共著で書籍として刊行することになったそうだ。
iBooksで電子書籍版もリリースしたが、「バックライトを通して見る電子書籍版のほうが、我々がiPhoneで撮影した際に感じたものをそのまま見ていただけると思う。閲覧のしやすさも優れるので、ぜひ電子書籍版で見てほしい」とコメントした。
まず、多くの人が撮る機会の多い料理の写真の撮り方については、藍矢さんが「構図も大事だが、それ以上に光源に気を配って撮影してほしい」と解説した。
「食べ物の写真は、何よりも色が大事。色が悪ければおいしそうに感じられず、写真の印象は悪くなってしまう。理想的なのは、店内の照明に頼るよりも、窓越しに差し込む日光を使って逆光状態で撮影すること」(藍矢さん)。席が選べるならば太陽光が差し込む窓際の席を確保し、窓に対面するように座るのがよいということだ。
店内の照明を使って撮影しなければならない場合も多いが、昨今は状況が悪くなりつつあるという。理由は、LED照明の普及だ。藍矢さんは「かつてお店の照明に使われていたハロゲンライトは自然光に近い高演色なので暖色系に仕上がり、料理がおいしく見えた。だが、LED照明だと全体が緑がかって再現されることが多く、そのままではおいしそうに見えない場合がある」と指摘。「LED照明が使われている場合、アプリで黄色を増すように補正するとよい」とアドバイスした。
講演では、残念ながら店をたたんでしまったという焼き鳥屋でかつて撮影した写真を披露。天井まで届くほどの大きな窓は煙や油ですっかり霞んでいたが、明さんは「このガラスを求めて撮影しに行った」と語る。「ガラスが汚いので店内に差し込む光が柔らかくなり、人や食べ物がきれいに表現できた」と、光を拡散するためのディフューザーとして汚いガラスを利用したことを明かした。
水平垂直を取ること、露出補正で明るさを調整することが大事
お気に入りの1枚として、藍矢さんがスウェーデンで撮影した図書館の写真も披露した。吹き抜けのフロアを撮影した1枚で、手前から奥まで整然と並ぶ柱や机が印象的な仕上がりになっている。藍矢さんは「このようなシーンに限らず、写真が傾いていては不安な印象が増すので好ましくない。水平や垂直をしっかり意識することでうまいと感じさせる写真になる。iPhoneの設定画面でグリッド(9分割の格子線)を表示し、それを参照に水平を取りながら撮るとよい」とアドバイスした。
露出補正で明るさを調整するのも、理想的な写真に近づけるためのポイントだと藍矢さんは語る。iPhoneのカメラは、暗い部分を基準に露出を合わせようとする傾向が強く、木漏れ日など明暗差の大きいシーンは見た目以上に明るく仕上がってしまうことがあるそうだ。
撮影して明るいと感じたら、画面内のピントを合わせたい部分をまずタップし、ピントが合った直後に画面を上下にスワイプして露出を調整すればよい。夜景を撮る際も、露出補正なしだと全体が明るくなりすぎてしまい、照明のある場所は露出オーバーで白く飛んでしまう。露出をマイナスに補正すれば、街灯で照らされた道や月も見た目通りに撮れる。
ちなみに、周りの人にiPhoneでの露出補正の方法を教えると「こんな機能があるの、知らなかった!」と驚かれることが多いという。「普通に撮るよりもワンステップ手間が増えるのは確かだが、一手間加えるだけで仕上がりが明らかに変わる」と藍矢さんは解説する。
「これは面白い」と感じるものを見つける好奇心が大事
藍矢さんは「iPhoneは写真を撮影する道具としての機能や画質が優れているが、それ以上に“いつも持っている”というのが何よりも素晴らしい。iPhoneがあれば“カメラを持ってくればよかった!”と後悔することがないので、とっておきのシーンを撮り逃すこともない」と、デジカメにはない魅力を高く評価した。
最後に、藍矢さんは「本当は撮影のテクニックよりも“これは面白いな!”という被写体を見つける好奇心を持つことが何よりも大事じゃないかと思う。その好奇心を引き出してくれるiPhoneは、僕にとって欠かせない相棒」と述べた。 (文/磯 修=日経トレンディネット)
「いいね」と思われる写真をiPhoneで撮るコツは
若手の写真家が解説
新しい国民の祝日として、今年から8月11日に「山の日」が加わったのはご存じの通り。ちょうどお盆休みに連なるタイミングだけに、12日の金曜日に休みを取得して長い休暇を取った人も少なくないのではないか。この時期は、レジャーや旅行の写真を撮ったりSNSに投稿する機会が増えるが、人に写真を公開するならば「センスがいいね」と思われたいのは誰しも同じだろう。
山の日を目前にした2016年8月10日、iPhoneでの撮影テクニックを紹介した書籍「LIFE and iPhone」を執筆した建築家の彦根 明さんと写真家の彦根藍矢さん親子が、「iPhoneで楽しむフォトグラフィー」をテーマにアップルストア銀座で講演した。「ちょっとしたテクニックがあれば、iPhoneを使って誰でもセンスあふれる写真が撮れる」とアドバイスした。
料理撮影の意外な厄介者がLED照明、色味の補正が肝心
登壇した彦根 明さんは、仕事で建物の写真を撮影する機会が多かった。だが、普段使っているiPhoneで目にしたものを撮影していったところ、たまたま仕事で一緒になった編集者の目に留まり、写真家として活躍する藍矢さんとの共著で書籍として刊行することになったそうだ。
iBooksで電子書籍版もリリースしたが、「バックライトを通して見る電子書籍版のほうが、我々がiPhoneで撮影した際に感じたものをそのまま見ていただけると思う。閲覧のしやすさも優れるので、ぜひ電子書籍版で見てほしい」とコメントした。
まず、多くの人が撮る機会の多い料理の写真の撮り方については、藍矢さんが「構図も大事だが、それ以上に光源に気を配って撮影してほしい」と解説した。
「食べ物の写真は、何よりも色が大事。色が悪ければおいしそうに感じられず、写真の印象は悪くなってしまう。理想的なのは、店内の照明に頼るよりも、窓越しに差し込む日光を使って逆光状態で撮影すること」(藍矢さん)。席が選べるならば太陽光が差し込む窓際の席を確保し、窓に対面するように座るのがよいということだ。
店内の照明を使って撮影しなければならない場合も多いが、昨今は状況が悪くなりつつあるという。理由は、LED照明の普及だ。藍矢さんは「かつてお店の照明に使われていたハロゲンライトは自然光に近い高演色なので暖色系に仕上がり、料理がおいしく見えた。だが、LED照明だと全体が緑がかって再現されることが多く、そのままではおいしそうに見えない場合がある」と指摘。「LED照明が使われている場合、アプリで黄色を増すように補正するとよい」とアドバイスした。
講演では、残念ながら店をたたんでしまったという焼き鳥屋でかつて撮影した写真を披露。天井まで届くほどの大きな窓は煙や油ですっかり霞んでいたが、明さんは「このガラスを求めて撮影しに行った」と語る。「ガラスが汚いので店内に差し込む光が柔らかくなり、人や食べ物がきれいに表現できた」と、光を拡散するためのディフューザーとして汚いガラスを利用したことを明かした。
水平垂直を取ること、露出補正で明るさを調整することが大事
お気に入りの1枚として、藍矢さんがスウェーデンで撮影した図書館の写真も披露した。吹き抜けのフロアを撮影した1枚で、手前から奥まで整然と並ぶ柱や机が印象的な仕上がりになっている。藍矢さんは「このようなシーンに限らず、写真が傾いていては不安な印象が増すので好ましくない。水平や垂直をしっかり意識することでうまいと感じさせる写真になる。iPhoneの設定画面でグリッド(9分割の格子線)を表示し、それを参照に水平を取りながら撮るとよい」とアドバイスした。
露出補正で明るさを調整するのも、理想的な写真に近づけるためのポイントだと藍矢さんは語る。iPhoneのカメラは、暗い部分を基準に露出を合わせようとする傾向が強く、木漏れ日など明暗差の大きいシーンは見た目以上に明るく仕上がってしまうことがあるそうだ。
撮影して明るいと感じたら、画面内のピントを合わせたい部分をまずタップし、ピントが合った直後に画面を上下にスワイプして露出を調整すればよい。夜景を撮る際も、露出補正なしだと全体が明るくなりすぎてしまい、照明のある場所は露出オーバーで白く飛んでしまう。露出をマイナスに補正すれば、街灯で照らされた道や月も見た目通りに撮れる。
ちなみに、周りの人にiPhoneでの露出補正の方法を教えると「こんな機能があるの、知らなかった!」と驚かれることが多いという。「普通に撮るよりもワンステップ手間が増えるのは確かだが、一手間加えるだけで仕上がりが明らかに変わる」と藍矢さんは解説する。
「これは面白い」と感じるものを見つける好奇心が大事
藍矢さんは「iPhoneは写真を撮影する道具としての機能や画質が優れているが、それ以上に“いつも持っている”というのが何よりも素晴らしい。iPhoneがあれば“カメラを持ってくればよかった!”と後悔することがないので、とっておきのシーンを撮り逃すこともない」と、デジカメにはない魅力を高く評価した。
最後に、藍矢さんは「本当は撮影のテクニックよりも“これは面白いな!”という被写体を見つける好奇心を持つことが何よりも大事じゃないかと思う。その好奇心を引き出してくれるiPhoneは、僕にとって欠かせない相棒」と述べた。 (文/磯 修=日経トレンディネット)
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