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  J.I.メールニュース No.767 2016.07.28  発行 
  「今こそローカリズム・日本の祭シリーズ   第十六弾 青 森 ね ぶ た」
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「 今 こ そ ロ ー カ リ ズ ム ・ 日 本 の 祭 シ リ ー ズ 
              第 十 六 弾   青  森  ね  ぶ  た 」

                  至学館大学・伊達コミュニケーション研究所長 
                                 石 田   芳 弘
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  某旅行会社のアンケートによるとわが国で一番人気のある祭は青森ねぶた祭だ。

  3百万人が訪れる観光用の祭典。いかなる寺社とも無関係な、宗教色のない祭だと聞いていたので関心の対象ではなかった。

  しかし、日本一観光客の多い祭を観ずして祭を語ることもまた偏屈だと思い、8月3日・4日出かけた。※会期は8月2日~7日

  私は全国の祭を考える際、わが故郷の犬山祭を座標軸の原点に置き、外の祭を観、考え、理解し、学び、評価したいと考えている。

  青森駅に降り立つとそこは、ねぶた祭一色の世界であった。

  駅前広場からいきなり津軽三味線の演奏が飛び込んできた。祭囃子の基本は笛・太鼓・鉦・鼓などである。

  三味線という楽器は少々複雑で他の祭囃子とは一線を画すが、津軽で聴く本場津軽三味線はまた格別迫力がある。一瞬にして地域の伝統的な芸能を動員して総合的に作られた祭であることを悟った。

  ねぶた師の存在もこの地の特徴であろう。プロのねぶた師が10人以上いると聞き、祭が地場産業の裾野を広げていると知った。からくり人形の祭のメッカ、中部地方ではプロのからくり人形師は2人しかいない。

  祭に参加するハネト(跳人)と呼ばれる踊り子の動きはラッセラー・ラッセラーの掛け声とともに誠に単純、誰にでもできる。笛・太鼓・鉦などの祭囃子と相まって、集団の醸す熱狂は祭の大切な要素ではあるが、それは多かれ少なかれどこの祭にもある。しかし、夜闇に浮き上がる巨大で赤を基調にした鮮やかなねぶたがあってこそ、彼らの興奮は引き出される。

  ねぶたのテーマは神話世界や津軽の歴史物語、はたまた三国志・水滸伝などを題材とした勇壮な影武者が描かれる。素材がユネスコ無形文化遺産の和紙であるところが重要だ。

  2015年はアメリカ映画スターウォーズのねぶたが作られたが、引き回すことはなかった。この祭は氏神や産土神を祀る神社の例祭ではなく、津軽藩を中心に、七夕の習慣と地域の伝統芸能などを入れて徐々に現在の形を整えてきたものであるが、一定の伝統と規律を尊重した「まつり」ではあると評価した。

  縄文最大の遺跡、三内丸山は祭会場と指呼の間にある。「ねぶたは縄文の祭 京都五山の送り火は弥生の祭」梅原猛流の視点や、このねぶたをこよなく愛した棟方志功の宗教色の強い芸術の数々を思い出した。ねぶたの照明が電気であることや、観光会社が商品化し過ぎた部分はやや不満であるが、日本人の宗教観や、かすか縄文の遺伝子を感じたことで私の内での日本の祭基準はクリアされた。

青森ねぶた 詳細はこちらから http://www.nebuta.or.jp/
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【石田 芳弘(いしだ よしひろ)氏のプロフィール】 愛知県議会議員、犬山市長、衆議院議員など、地方、中央の政治と行政を経験。特に教育、文化行政に力を入れた。「まちは生涯学習の最良の教室である」というのが持論であり、学校教育も生涯学習の一環であると考え、市民が教師の総合学習や全市博物館構想を推進。また、シンクタンクの研究員として先進国の地方議会を視察、研究。我が国地方議会も議院内閣制を導入すべしという、地方議会改革論議のオピニオンリーダーである。

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