◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.48
 発信日:2016年 5月 6日                 発信者:加藤特許事務所
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
 平成28年熊本地震により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
★ 目 次 ★
 1.弁理士コラム
  ●商標「フランク三浦」を見て思うこと
 2.知財ニュース
  ●特許庁ステータスレポート2016公表
  ●中外製薬勝訴 知財高裁、後発薬メーカーの製法特許侵害認める判決
 3.連載 知財講座
  ●第48回:商標「キャッチフレーズや標語等は商標登録されるのか?」
 4.事務所からのお知らせ
  ●熊本地震に関する手続電話相談
  ●外国出願にかかる費用の半額の助成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.弁理士コラム
――――――――――――――――――――――――――――――――――
●商標「フランク三浦」を見て思うこと
 先日、新聞・テレビで「裁判所が「フランク三浦」を認める・・・フランク・ミュラーとは非類似」という報道がされました。御存じの方も多いでしょう。
 念のために説明しておきますと、「フランク・ミュラー」とは、その多くが100万円超の腕時計のブランドです。一方の「フランク三浦」は「フランク・ミュラー」をもじったことが誰でもわかる日本の腕時計のブランドです。案の定と言うべきか、大阪の会社です。
 報道だけを見ると、「フランク三浦」にお墨付きが与えられたというような印象を持ちますが、実態は少し違います。正確には次のような経緯でした。
(1)「フランク三浦」が商標登録された。
(2)これに対して、フランク・ミュラーが商標登録無効審判を請求し、「フランク三浦」の商標登録を無効にした。
(3)フランク三浦側がこの無効審決の取り消しを求めて知財高裁に審決取消訴訟を起こした。
(4)知財高裁はフランク三浦側の主張を認めて無効審決を取り消した。
 現時点では、まだ知財高裁の判決が確定したかどうかはわかりません(フランク・ミュラー側が上告する可能性もあるので)。
 知財高裁が無効審決を取り消した理由はいくつかあります。
 一番大きい理由は外観の非類似です。称呼は類似と言えるかもしれませんが、外観が全く違うので、商標としては非類似であるということです。
 それと、報道にもあったように、三浦は日本人を連想させる名称であるし、フランク・ミュラーとフランク三浦とでは価格帯が違う(フランク・ミュラーの多くは100万円クラスであるのに対して、フランク三浦は数千円)、という理由から、混同は起きないと言うものでした。
 今回の判決で言えることは、「フランク三浦」の商標登録は有効である、ということだけです。つまり、「フランク三浦」という名称を使用することに問題はなくなったというわけです。
 ただし、ここが肝心なポイントですが、「フランク三浦」という名称を使用することはできるけども、「フランク三浦」ブランドで売られている「腕時計」を今後も販売して良いかどうかは別の問題です。
 「フランク三浦」ブランドの「腕時計」をご覧になったことがあるでしょうか(ネットで簡単に見ることができます)。本家の「フランク・ミュラー」とデザインがよく似ています(あくまでも、このコラムの筆者の主観の話です)。「フランク・ミュラー」を意識して作ったのでしょうから、似ているのは当然と言えば当然です。ただ、判決も言及しているように、「フランク三浦」ブランドの腕時計と本家「フランク・ミュラー」の腕時計を混同する人はさすがにいないでしょう。
 報道では、「フランク三浦」は「フランク・ミュラー」の「パロディ」であるとしていますが、「パロディ」の言葉を使ったのは「フランク三浦」側に好意的であるからでしょう。そうでなければ、「パクリ」というネガティブな言葉を使ったはずです。実際、双方の腕時計の外観はよく似ています。時計の文字盤に書いてある「フランク三浦」や「フランク・ミュラー」の文字が見えない程度の距離まで離して見ると、ほとんど判別不可能なほどに双方はよく似ています。
 と言うことは、外観に関して、不正競争防止法で争ったら、フランク三浦側が本家のフランク・ミュラーに負ける可能性は少なからずありそうです。
 以下は私の個人的な考えですが、フランク・ミュラーの腕時計のデザインはかなり独創的と思われます。そのデザインをパクッたと言われても仕方がない腕時計が堂々と市販されるのは、国際的な信用を考えても、好ましくないのではないか、と思います。
                       副所長 弁理士 天野 広
――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.知財ニュース
――――――――――――――――――――――――――――――――――
●特許庁ステータスレポート2016公表
 特許庁は3月29日、最新の統計情報、政策の成果をまとめた「特許庁ステータスレポート2016」を公表しました。(全頁(114頁)PDF形式で公開。)
 同レポートによりますと、2015年の日本の特許出願件数は318,721件と、2006年以降漸減傾向ですが、一方出願年別に見たときの特許登録率(出願件数に対する登録件数の割合)は増加傾向ですので、出願の厳選が進んでいると考えられます。
 国際的な出願動向では、2015年に特許庁を受理官庁としたPCT国際出願件数は43,097件、2014年に世界全体で出願された特許出願件数は268.1万件といずれも過去最高を記録しています。
 2015年の特許登録者上位は、1位がトヨタ(4,614件)、2位がキヤノン(3,717件)、3位が三菱電機(3,364件)、4位が東芝(2,514件)、5位がパナソニック(2,445件)、6位が富士通(2,339件)、7位がセイコーエプソン(2,264件)、8位がリコー(2,053件)となっています。
 詳細は、下記のURLをご覧ください。
[URL] https://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/status2016.htm
●中外製薬勝訴 知財高裁、後発薬メーカーの製法特許侵害認める判決
 中外製薬が自社の軟こう薬の製法特許(特許番号3310301号)を侵害されたとして、後発医薬品メーカーなど4社を提訴していた訴訟において、知財高裁は3月25日、中外製薬の主張を認めて、4社に販売の差し止めなど命じた一審の東京地裁判決を支持し、後発薬メーカー4社が特許権を侵害しているとの判決を下しました。
 今回の訴訟では、4社の軟こうの製法は、中外製薬の特許発明と完全に同じではないが、実質的に同一(「均等」)であるかが争われて、知財高裁は、重要事件に対応する裁判官5人による「大合議」で審理を行い、「均等」(2015年11月2日発行のメルマガVol.45 知財講座 参照)の要件全てを満たしていると判断して、後発医薬品メーカーの特許権侵害を認定しました。今回の判決は、後発医薬品メーカーに対して厳しいものになり、今後の開発にも影響を与える可能性があります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
3.連載 知財講座
――――――――――――――――――――――――――――――――――
第48回:商標「キャッチフレーズや標語等は商標登録されるのか?」
 キャッチフレーズやスローガン、標語などに対する審査基準が定められました。この審査基準は、4月1日以降の審査に適用されます。
 キャッチフレーズやスローガン、標語などは、原則として、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものとして取り扱われ、登録できない商標の一つとなっています。
 しかし、これまでは、標語、キャッチフレーズの構成からなる商標であると判断するための客観的な基準が示されておらず、出願人の予見可能性を十分に確保できていないとの指摘がありました。
 また、審査で標語、キャッチフレーズに該当するものとして拒絶された商標が、拒絶査定不服審判ではこれに該当しないとして判断が覆るものが多数存在しているとの指摘がありました。
 以上のような指摘を踏まえて、この度、審査基準の改定がなされ、「宣伝広告又は企業理念・経営方針等」として認識されるような商標について、色々な規定が設けられました。
 まず、「宣伝広告」は以下のようなものが該当すると規定されています。
(1)指定商品又は指定役務の説明を表すこと
(2)指定商品又は指定役務の特性や優位性を表すこと
(3)指定商品又は指定役務の品質、特徴を簡潔に表すこと
(4)商品又は役務の宣伝広告に一般的に使用される語句からなること
 次に、「企業理念・経営方針等」は以下のようなものが該当すると規定されています。
(1)企業の特性や優位性を記述すること
(2)企業理念・経営方針等を表す際に一般的に使用される語句で記述していること
 しかし、このように規定されていても、中々直感的に、どのような商標が「宣伝広告又は企業理念・経営方針」として認識されるのか、不明な点が多いような気が致します。
 また、規定が明文化されることにより、一層、審査が厳しくなったとの印象も受けます。
 このような規定では、おそらく、「宣伝広告又は企業理念・経営方針等」に該当するか否かの判断は、バラツキますので、結局、出願して審査を受けてみないとわからない、という点においては、従前とあまり変わってないのかも知れません。
 商標がキャッチフレーズに該当するかと思い込み、最初から登録を諦めてしまい、そのままの状態にしておいた間に、他人に登録されてしまい、使えなくなってしまうこともあるかも知れません。
 キャッチフレーズと思われるようなものでも、審査を受けてみることをお勧めいたします。
 今後、段々に、審査基準も変わっていくかと思われますが、審査基準の改定がありましたら、随時お知らせいたします。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
4.事務所からのお知らせ
――――――――――――――――――――――――――――――――――
●熊本地震に関する手続電話相談
 平成28年熊本地震の影響を受けた方に対しては、手続の取り扱い等の特別な措置がとられますが、特許庁は、専用の相談窓口を設置しております。下記の相談窓口へお問合せ下さい。
熊本地震に関する手続電話相談窓口
TEL:03-3581-1101 内線:5000,5100,5200
受付時間:8時30分から18時15分まで (但し、土・日・祝日は除きます。)
●外国出願にかかる費用の半額の助成
 特許庁は、平成28年度も中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の半額を助成します。
  補助率:1/2
  上限額:1企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
(案件ごとの上限額:特許 150万円
          実用新案・意匠・商標 60万円
          冒認対策商標 30万円)
 応募期間は、実施機関ごとに異なります。現時点ではまだ発表されておりませんが、過去の申込期限としましては、5月末の例や8月中旬の例もあり、二次募集をする場合もあります。
 応募期間は短いですので、ご注意願います。
 全国の実施機関毎の募集状況や応募資格につきましては、下記のURLをご覧下さい。
[URL] https://www.jpo.go.jp/sesaku/shien_gaikokusyutugan.htm
-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
加藤特許事務所
 編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
 福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
 URL:http://www.kato-pat.jp/
 TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

コメント