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 J.I.メールニュース No.738 2016.01.07 発行
     「 福祉国家×民主主義×経済成長  の先へ 」
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<年頭挨拶文>  
   「 福 祉 国 家 × 民 主 主 義 × 経 済 成 長 の 先 へ 」
                                代表  加藤 秀樹
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あけましておめでとうございます。

  年頭から大袈裟なようですが、社会のなりたちについてこんなことを考えてみました。

  私たちの多くが持っている国家のイメージは、国民の生活の安定と一定レベルの保障を国が担うという意味での「福祉国家」でしょう。そして、国の事業の内容を決める政治のしくみが代議員制による「民主主義」であり、それを財政的に担保するのが「経済成長」という組み合わせが、いわゆる先進諸国の枠組みなのだと思います。

  ところが、この三つの要素それぞれが、互いに他の要素の基盤を蝕む状況が生じ、その結果この組み合わせが機能しなくなりつつあるような気がするのです。

  日本などで国が提供する福祉のレベルは全体としてはいわゆるベーシック・ヒューマン・ニーズをかなり超えていますが、国民はさらに上を求めています。また、高齢社会、経済格差の拡大、独居化などによる新しい福祉ニーズも次々生じています。

  それらについて議論すべき民主主義のしくみは、有権者の様々な要求に応えようと、政権の如何を問わず、国の如何を問わずバラマキ的傾向を強くしています。やや誇張気味な言い方をすると、国民の要求合戦、政党、政治家の応答合戦みたいになりがちです。日本の場合、ここに行政機関の分捕り合戦が加わります。

  一方で、この拡張の連鎖を財政的に支えるべき経済は、先進国の場合、成熟社会であること、新興国、途上国などに対する優位性が小さくなっていることなどの理由で、もはや大きい成長は期待できそうにありません。その結果、多くの国で財政が不健全な状況が続いています。加えて、経済の効率化を強く進めると、格差の拡大など、新たな福祉対象も生じます。

  近代民主主義は、国民すべてが個人のことだけでなく社会全体のことに関心を持ち、その関心に基づいて投票するというのが大前提ですが、個人の生活が豊かになるに従って全体のことに対する関心が薄れるという傾向は、日本を筆頭に多くの先進国で見られるようです。

  また、高度な福祉国家になればなるほど、行政システムやルールが複雑精緻になり行政コストさらには社会的なコストも大きくなります。

  このように見てくると、私たちは、目の前の財政改革、行政改革、景気対策といったレベルではなく、国家、民主主義、経済のあり方をもっと根底から考えないといけない時代に来ているのではないでしょうか。

  最近のテロや国際紛争にも、上に述べたしくみをうまく回すために一部の国が他の国を犠牲にしてきたという背景があると思います。

  構想日本が続けている「自分事」化活動は、このような大きな動きの中ではささやかですが、草の根レベルで具体的な形を示し、積み上げていこうというものです。

  構想日本一同こんなことを考えながらやっています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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