戦後70年、朝河貫一が求めた共存英知
2015年8月13日 お仕事 戦後70年を経過したいま『日本の一番長い、長い熱い日』を迎え、広島・長崎原爆の灼熱、人類史上最悪の尊い人命を犠牲にした上で遂に迎えた敗戦地獄。ところが戦後教育の日本現代史をまともに学び得ていない若者たちへの街頭質問で、太平洋戦争での日本の戦争相手国名をまともに回答できない平和ボケだと悔しがる戦争経験世代層の歯ぎしり。
いずれも目下参議院での安全保障関連法案の審議を挟んで、日本国民が世界平和時代への推進役として知行合一の信頼できる世界史リーダー役足り得るか否か。『生涯現役プロデューサー』役を果たすべき私たち生涯現役仲間には、確固たる決意の判断基準で謙虚に人生達人たる役割を務めたいものである。そのために下記マスメディアから提供された情報をどう捉えられるか、建設的ご意見で次回理事会席上ご審議をお願いしたいものである。
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【2015/8/10 6:30 日本経済新聞 電子版】
今週末、日本は戦後70年の節目を迎えます。戦時中は軍事機密だった天候情報ですが、残る記録によれば70年前の8月15日、東京の天気は晴れ、最高気温は32.3℃だったようです。当時以上に暑い今夏の70周年の焦点は安倍首相の談話ですが、気になるのは談話公表後の中韓の反応です。ある程度の反発は織り込み済みとしても、その反発の度合い、さらには秋以降の外交に与える影響も注視する必要があるでしょう。安保法案の参院審議の本格化もこれからですし、9月には自民党総裁選も控えています。支持率が低下傾向にある安倍政権にとって気の抜けない日が続きます。日本の「暑い夏」はまだまだ続きます。(電子編集本部電子編集部 田村俊一)
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関連URL=http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90227120W5A800C1000000/
【ニュースこう読む(小竹洋之)】
戦 後 7 0 年 、
朝 河 貫 一 が 求 め た 共 存 の 英 知 を ワシントン支局長 小竹洋之
【小竹洋之(こたけ・ひろゆき)プロフィール】 88年日本経済新聞社入社。経済部編集委員兼論説委員を経て、14年3月からワシントン支局長。専門はマクロ経済、財政・金融政策、国際金融。
【筆者が注目した記事】
・8月 6日 日経朝刊4面「戦後70年談話、14日軸に」
・8月 2日 日経朝刊2面「どう戦前に向き合うか」
・7月21日 日経朝刊1面「米キューバ国交回復、54年ぶり」
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米東部コネティカット州ニューヘブン。その人の墓はグローブストリート墓地の一角にあった。日本人で初めて米エール大教授を務めた歴史学者の朝河貫一(1873~1948年)――。明日8月11日は彼の命日に当たる。
■ 「 警 告 」 は 届 か ず
「今や日本は国運の分かれ目に立てるものなり」。若くして渡米した朝河は1909年に出版した著書「日本の禍機(かき)」で、祖国の行く末を憂えた。日本が日露戦争の勝利に慢心し、中国で領土拡張に走るのなら、世界の中で孤立し、米国との衝突も避けられなくなると警告したのだ。
この懸念は現実のものとなる。1941年、朝河は日米開戦を阻止しようと、フランクリン・ルーズベルト大統領から昭和天皇に親書を送るよう働きかけた。だが親書が届いたのは真珠湾攻撃の開始直後で、内容も朝河の草案とは別物と化していた。
自由と平和を尊び、共存の英知を求めたという朝河。エール大の記念庭園や元オフィスを訪ね、存命中の書簡にも目を通してみた。日本の歴史を研究するダニエル・ボッツマン教授は「もっと多くの人たちが記憶にとどめる価値のある人物だ」と指摘する。
第2次世界大戦の終結から70年。朝河がもし生きていれば、今の世界をどう評価しただろうか。
「戦前は民主主義の代わりとなる強力な選択肢、すなわちファシズムや共産主義があった。戦後はそれほど強く民主主義と対峙するものがない」。最近会った米ハーバード大のジョセフ・ナイ特別功労教授はこう話していた。
確かに世界の民主化は進んだ。米人権団体フリーダムハウスがまとめた2015年版のリポートによると、世界195カ国のうち完全な自由国家は46%、部分的な自由国家は28%に達する。世界人口の6割以上を占める46億人が、程度の差はあっても「自由」と呼ばれる国に住んでいる計算だ。
英調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが算出した14年版の民主化度指数を見ると、日本は世界167カ国・地域のうちの20位で、米国の19位に次ぐ。米国と戦火を交えた日本は大きな代償を払った末に、代表的な民主主義国家に生まれ変わったと言ってもいい。
グローバル化や市場化のパワーはもっと強い。米国との国交回復で54年ぶりに再開したキューバの在米大使館。その両隣にはポーランドとリトアニアの大使館が並ぶ。1989年の冷戦終結を機に、かつての共産主義圏と資本主義圏の融合が加速したことを象徴している。
■ 先 達 の 思 い に こ た え る か
米共和党のフォード政権とブッシュ(父)政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたブレント・スコウクロフト氏は「世界経済はもはや異質の政治システムまで取り込んでいる」と語る。そんな統合の深化が決定的な対立の抑止力になっているのも事実だ。
もちろん期待したほどの平和や安定が訪れたとはいえない。ロシアのクリミア編入、中国の海洋進出、北朝鮮の核開発……。地政学的な問題は今も後を絶たない。
世界の相互依存関係が深まるなかで、危険な衝突を避けながら、国家間や地域間の利害をどう調整していくのか。戦後70年の教訓も踏まえ、朝河のいう共存の英知をもう一度問い直す時が来ている。
安倍晋三首相は今週、戦後70年の談話を発表する見通しだ。先の大戦への痛切な反省を表明し、平和国家として歩んできた戦後日本の姿を強調したいという。その書きぶりは近隣国との緊張を高めるのか、それとも和らげるのか。日本の慢心を案じ続けた先達の思いにこたえる内容であってほしい。
いずれも目下参議院での安全保障関連法案の審議を挟んで、日本国民が世界平和時代への推進役として知行合一の信頼できる世界史リーダー役足り得るか否か。『生涯現役プロデューサー』役を果たすべき私たち生涯現役仲間には、確固たる決意の判断基準で謙虚に人生達人たる役割を務めたいものである。そのために下記マスメディアから提供された情報をどう捉えられるか、建設的ご意見で次回理事会席上ご審議をお願いしたいものである。
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【2015/8/10 6:30 日本経済新聞 電子版】
今週末、日本は戦後70年の節目を迎えます。戦時中は軍事機密だった天候情報ですが、残る記録によれば70年前の8月15日、東京の天気は晴れ、最高気温は32.3℃だったようです。当時以上に暑い今夏の70周年の焦点は安倍首相の談話ですが、気になるのは談話公表後の中韓の反応です。ある程度の反発は織り込み済みとしても、その反発の度合い、さらには秋以降の外交に与える影響も注視する必要があるでしょう。安保法案の参院審議の本格化もこれからですし、9月には自民党総裁選も控えています。支持率が低下傾向にある安倍政権にとって気の抜けない日が続きます。日本の「暑い夏」はまだまだ続きます。(電子編集本部電子編集部 田村俊一)
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関連URL=http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90227120W5A800C1000000/
【ニュースこう読む(小竹洋之)】
戦 後 7 0 年 、
朝 河 貫 一 が 求 め た 共 存 の 英 知 を ワシントン支局長 小竹洋之
【小竹洋之(こたけ・ひろゆき)プロフィール】 88年日本経済新聞社入社。経済部編集委員兼論説委員を経て、14年3月からワシントン支局長。専門はマクロ経済、財政・金融政策、国際金融。
【筆者が注目した記事】
・8月 6日 日経朝刊4面「戦後70年談話、14日軸に」
・8月 2日 日経朝刊2面「どう戦前に向き合うか」
・7月21日 日経朝刊1面「米キューバ国交回復、54年ぶり」
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米東部コネティカット州ニューヘブン。その人の墓はグローブストリート墓地の一角にあった。日本人で初めて米エール大教授を務めた歴史学者の朝河貫一(1873~1948年)――。明日8月11日は彼の命日に当たる。
■ 「 警 告 」 は 届 か ず
「今や日本は国運の分かれ目に立てるものなり」。若くして渡米した朝河は1909年に出版した著書「日本の禍機(かき)」で、祖国の行く末を憂えた。日本が日露戦争の勝利に慢心し、中国で領土拡張に走るのなら、世界の中で孤立し、米国との衝突も避けられなくなると警告したのだ。
この懸念は現実のものとなる。1941年、朝河は日米開戦を阻止しようと、フランクリン・ルーズベルト大統領から昭和天皇に親書を送るよう働きかけた。だが親書が届いたのは真珠湾攻撃の開始直後で、内容も朝河の草案とは別物と化していた。
自由と平和を尊び、共存の英知を求めたという朝河。エール大の記念庭園や元オフィスを訪ね、存命中の書簡にも目を通してみた。日本の歴史を研究するダニエル・ボッツマン教授は「もっと多くの人たちが記憶にとどめる価値のある人物だ」と指摘する。
第2次世界大戦の終結から70年。朝河がもし生きていれば、今の世界をどう評価しただろうか。
「戦前は民主主義の代わりとなる強力な選択肢、すなわちファシズムや共産主義があった。戦後はそれほど強く民主主義と対峙するものがない」。最近会った米ハーバード大のジョセフ・ナイ特別功労教授はこう話していた。
確かに世界の民主化は進んだ。米人権団体フリーダムハウスがまとめた2015年版のリポートによると、世界195カ国のうち完全な自由国家は46%、部分的な自由国家は28%に達する。世界人口の6割以上を占める46億人が、程度の差はあっても「自由」と呼ばれる国に住んでいる計算だ。
英調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが算出した14年版の民主化度指数を見ると、日本は世界167カ国・地域のうちの20位で、米国の19位に次ぐ。米国と戦火を交えた日本は大きな代償を払った末に、代表的な民主主義国家に生まれ変わったと言ってもいい。
グローバル化や市場化のパワーはもっと強い。米国との国交回復で54年ぶりに再開したキューバの在米大使館。その両隣にはポーランドとリトアニアの大使館が並ぶ。1989年の冷戦終結を機に、かつての共産主義圏と資本主義圏の融合が加速したことを象徴している。
■ 先 達 の 思 い に こ た え る か
米共和党のフォード政権とブッシュ(父)政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたブレント・スコウクロフト氏は「世界経済はもはや異質の政治システムまで取り込んでいる」と語る。そんな統合の深化が決定的な対立の抑止力になっているのも事実だ。
もちろん期待したほどの平和や安定が訪れたとはいえない。ロシアのクリミア編入、中国の海洋進出、北朝鮮の核開発……。地政学的な問題は今も後を絶たない。
世界の相互依存関係が深まるなかで、危険な衝突を避けながら、国家間や地域間の利害をどう調整していくのか。戦後70年の教訓も踏まえ、朝河のいう共存の英知をもう一度問い直す時が来ている。
安倍晋三首相は今週、戦後70年の談話を発表する見通しだ。先の大戦への痛切な反省を表明し、平和国家として歩んできた戦後日本の姿を強調したいという。その書きぶりは近隣国との緊張を高めるのか、それとも和らげるのか。日本の慢心を案じ続けた先達の思いにこたえる内容であってほしい。
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