「インターンシップ」の現状と課題【前篇2】
2015年6月17日 お仕事「インターンシップ」の現状と課題【前篇2】
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 種 類 」 と
大 学 が 期 待 す る 「 役 割 」
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 種 類 」
インターンシップといっても、その形態は多種・多様である。「期間」も1日のものから数週間~数ヵ月に及ぶものがあり、「目的」も採用を意識したものから、あくまで教育を中心に置いたものまである。当然、「開催形式」や「プログラム内容」は目的によって変わってくるわけで、近年では「有給」というケースも増えている。
そうした中でも、主流となるのは「模擬体験タイプ」である。これは実際の職場で業務を体験するのではなく、模擬的に体験・理解できるようなプログラム内容だ。業務に関する簡単なレクチャーを行った後、業務に関わるテーマを提示し、グループや個人で取り組ませる。これらを実施することで、認知度拡大、早期の母集団形成を図っていく。期間は1日~1週間程度というケースが多い。
一方、採用を意識し、業務を実際の職場で体験する機会を提供する「現場受け入れタイプ」を導入する企業もある。インターンシップでの成果や目標は人事主導で設定するが、具体的な日常の担当業務は現場で指導する実務担当者に委ねられる。期間は1週間~1ヵ月に及ぶが、終了後の学生の満足度は総じて高い。自社理解、業務理解が進み、動機付けも強くなっていくことで、入社後もその担当業務に継続して取り組みたいという学生も少なくないようだ。ただし、相応の拘束期間が必要になるため、学生と現場の双方のスケジュール確保と調整が大変である。
■ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 種 類
期間 短 期 長 期
目的 認知度拡大、母集団形成 魅力発信、自社理解(選考)
開催形式・プログラム内容 説明会・セミナー、 模擬体験現場での就労体験
報酬 無給(*交通費は支給) 有給
◆ 大 学 が イ ン タ ー ン シ ッ プ に 期 待 す る 「 役 割 」
今回のレポートをまとめるために、いくつかの大学関係者の話を聞いてみたが、大学がインターンシップに期待する「役割」として、次のような点が挙げられた。企業側は、こうした大学の期待に対して、実施する際には明確に自社の行うインターンシップの趣旨と、目的を伝えることが必要である。
(1)「企業説明会」としての場
2016年度3月卒の採用活動の後ろ倒しを受け、短期間のインターンシップが増えており、現実問題として、職業体験は実施されないケースが多くなっている。そこで企業は少しでも早く学生との接点を設けるため、「企業説明会」として「1日インターンシップ」を導入し始めている。結果的に短期のインターンシップは、職場体験型のインターンシップとは別に、若年層の教育において重要な気づきを与え、多くのものを学べる場(機会)として期待している。
(2)実際の職場を体験し、「キャリア教育」につなげる
実際の職場で体験を積み、働いている人とさまざまな話をすることによって、社会に出て自立していくことに必要な事項を理解することができる。このような機会を得ることにより大学時代に学ぶべきことを考え、目標や目的意識をもって主体的に大学生活を過ごすことができる。「キャリア教育」の一環として、できれば2年次など大学時代に初期に行われることが望ましい。
(3)企業や業界を理解し、「ギャップ」をなくす
就職先についての意識が高まっている中での就業体験である。実際に仕事を体験し、興味のなかった分野にも目を向け、選択の幅を広げることができる。また、実体験を通じて企業研究・業界研究を行うことができるため、文献やセミナーでは得られない深い理解が可能となる。さらに、社会人として求められていることについても体験を通じて具体的に理解することができるので、自分が思い描いていた仕事内容と実際との「ギャップ」が理解できる。これらの結果、就職後のミスマッチ、早期離職の予防につながっていく。
(4)「採用」と結び付ける
3年次には、学生も就職先を意識してインターンシップに取り組んでいる。また、企業も相応の時間とコストがかかる中で実施しており、良い学生に来てもらいたいと考えることは当然のことである。その意味からも、インターンシップ参加学生に対しては、採用の際に「優先権」を与えてみてはどうだろうか。
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 課 題 」 と は
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ に 対 す る 「 思 惑 」 の 違 い
インターンシップを実施することによって、学生は企業を知り、働くことの意味や職業観を深く理解することができる。一方、企業は採用を意識したインターンシップであれば、学生の能力や考えを理解した上で選考に臨めるため、採用のミスマッチは減っていくと考えられる。しかし、現状のインターンシップを見ると、受け入れ側の企業と学生側の「思惑」には違いが少なくない。
学生が就職活動で重要な活動として挙げるのは「インターンシップ経験」や「アルバイト経験」「OB・OG訪問」など、社会人と接することで「自己理解」を得る場である。何より、学生は社会人との接点を多く持つことで、早く企業社会を理解し、就職活動を有利に進めていきたいと考えているのである。
ところが、企業はインターンシップには実際の採用選考と連動させないことが前提となっている(日本経済団体連合会の傘下企業)。また、採用ブランディングの高い(採用力のある)大企業では、会社全体の説明や現場での仕事理解を深めるプログラムを組んだとしても、忙しい部署ほどインターンシップにはおよび腰であり、現場の優秀なスタッフの時間を学生に割きたくない、という声も少なくない。
■ 「 採 用 選 考 に 関 す る 指 針 」 の 手 引 き
インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環として位置づけられるものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある。
(一般社団法人 日本経済団体連合会)
他方、日本経済団体連合会に所属していない外資系企業やベンチャー企業、コンサルティング企業などでは、採用と連動したインターンシップを以前から実施している。しかも、相当額の報酬を支払って実施している企業もあり、日本の大企業が採用活動を始める前に、優秀な学生を青田刈りしている現実があるのは周知の通りである。また、起業家精神の高い優秀な学生などは、企業社会の現実をより知るチャンスがあるため、積極的にインターンシップに参加するケースが多いという話をよく聞く。
つまり、日本は企業の社会的責任としての観点や教育的な視点からインターンシップを導入する大企業を中心としたグループがある一方で、採用を意識したインターンシップを行う外資系、ベンチャーなどの企業があるという、二重構造となっているのだ。
日本経済団体連合会では採用・就職活動を加熱させないためにインターンシップの指針として採用につながるものは実施してはいけないと定めているが、実際にインターンシップを経験した学生が、その企業に理念や事業、社員の人たちに共感・共鳴すれば、就職したいと思うのは当然のことである。また、企業としても自社の理念・社風に合う優秀な学生であれば、採用したいと思うのは当然だろう。自由経済の下、こうした人間の意思を制御するのは、難しいように思う。
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ を 実 施 す る 際 の
「 留 意 点 」「 配 慮 」
インターンシップは早期の募集活動となるため、大手企業や有名企業に希望が集中する傾向がある。そのためにも、実施する企業ではそれを覆すような魅力的なプログラムを用意し、差別化する必要がある。実際の募集では、大学への求人票の形で告知したり、インターンシップ専用のメディアやイベントを使って行うことが主流であるが、これだけでは不十分である。ダイレクトメールを配信したり、内定者や若手社員の口コミ、学生サークルなどとの連携を通じた告知も必要となるだろう。学生とダイレクトにコミュニケーションが取れるチャンスは限られている。わずかなコミュニケーションで学生に自社のインターンシップへの参加を決めてもらうためには、募集業務を想定しながら、自社の独自性を明確にし、参加対象となる学生の満足度が高まる要素を加える必要がある。
また、実際にインターンシップを運営していくに際しては、以下のような配慮が求められる。
(1)客観的な選考
インターンシップは一定期間を自社で過ごすため、仕事だけでなく、会社の風土や人間関係への理解が深まる。そのことで、参加者にアドバンテージを付与するケースもある。しかし、短期間のインターンシップだけで将来の職業適応度まで明確に分かるわけではない。インターンシップ参加者と仲が良くなった結果、マッチング度が高くなるのではなく、選考ではより客観的な評価を意識することが大切である。
(2)開催時期への対応
2016年卒の採用活動時期の変更に伴い、現在、インターンシップ開催時期の中心となる夏季休暇に、採用活動が重なることになった。インターンシップの対応に手が回らず、一時的に受け入れの人数が減ることが懸念される。そのためにも、全社を巻き込んだ形の協力体制を要請しておく必要がある。また、選考との“つなぎ”期間の短さから、冬期のインターンシップ(3年生の冬季休暇中に実施)への注目が集まっている。今後、この時期の競争の激化も予想されるので、早めの準備が求められる。
(3)労働関係法規の適用
インターンシップの名目で、学生の労動力を安価な報酬で利用するケースがあると聞く。安易な報酬決定は、自社の信用・ブランドを傷つけることにつながる。また、インターンシップの実態から判断して、労働者とみなされる場合は、賃金や労働条件に関して労働基準法、最低賃金法などが適用されるとともに、実施中の事故に関しても労災保険法の適用があることに留意する必要がある。
個人的な意見ではあるが、学生は「就職サイト」で数限りないエントリーをさせられることよりも、質の高いインターンシップを経験し、企業の本質を知った上での就職活動が望んでいるように思う。
現実問題として、企業の社会的責任としての観点からインターンシップを行う企業と、採用を意識したインターンシップを行う企業があるという二重構造が存在する以上、インターンシップを実施する企業はその目的を明確に謳うことが求められてくるのではないか。そうすれば、参加する学生の思惑と企業の思惑が合致することになり、それぞれの目的が達せられることになる。この点を曖昧にし、現状を無視した一方的な「あるべき論」によるインターンシップでは、実となるものは少ないように思う。
インターンシップは実施する側、受講する側でいろいろな目的がある点を含め、若年層の教育において重要な位置を占めているのは間違いない。その意味でも、大学、企業、そして社会全体が連携し、インターンシップを有効に活用していく必要がある。
* *
以上、『前編』はインターンシップの現状と課題について見てきた。次回の『後編』では、「採用連動型のインターンシップ」を中心に、実施目的を明確にしたインターンシップの具体的な事例を紹介していく。
解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 種 類 」 と
大 学 が 期 待 す る 「 役 割 」
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 種 類 」
インターンシップといっても、その形態は多種・多様である。「期間」も1日のものから数週間~数ヵ月に及ぶものがあり、「目的」も採用を意識したものから、あくまで教育を中心に置いたものまである。当然、「開催形式」や「プログラム内容」は目的によって変わってくるわけで、近年では「有給」というケースも増えている。
そうした中でも、主流となるのは「模擬体験タイプ」である。これは実際の職場で業務を体験するのではなく、模擬的に体験・理解できるようなプログラム内容だ。業務に関する簡単なレクチャーを行った後、業務に関わるテーマを提示し、グループや個人で取り組ませる。これらを実施することで、認知度拡大、早期の母集団形成を図っていく。期間は1日~1週間程度というケースが多い。
一方、採用を意識し、業務を実際の職場で体験する機会を提供する「現場受け入れタイプ」を導入する企業もある。インターンシップでの成果や目標は人事主導で設定するが、具体的な日常の担当業務は現場で指導する実務担当者に委ねられる。期間は1週間~1ヵ月に及ぶが、終了後の学生の満足度は総じて高い。自社理解、業務理解が進み、動機付けも強くなっていくことで、入社後もその担当業務に継続して取り組みたいという学生も少なくないようだ。ただし、相応の拘束期間が必要になるため、学生と現場の双方のスケジュール確保と調整が大変である。
■ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 種 類
期間 短 期 長 期
目的 認知度拡大、母集団形成 魅力発信、自社理解(選考)
開催形式・プログラム内容 説明会・セミナー、 模擬体験現場での就労体験
報酬 無給(*交通費は支給) 有給
◆ 大 学 が イ ン タ ー ン シ ッ プ に 期 待 す る 「 役 割 」
今回のレポートをまとめるために、いくつかの大学関係者の話を聞いてみたが、大学がインターンシップに期待する「役割」として、次のような点が挙げられた。企業側は、こうした大学の期待に対して、実施する際には明確に自社の行うインターンシップの趣旨と、目的を伝えることが必要である。
(1)「企業説明会」としての場
2016年度3月卒の採用活動の後ろ倒しを受け、短期間のインターンシップが増えており、現実問題として、職業体験は実施されないケースが多くなっている。そこで企業は少しでも早く学生との接点を設けるため、「企業説明会」として「1日インターンシップ」を導入し始めている。結果的に短期のインターンシップは、職場体験型のインターンシップとは別に、若年層の教育において重要な気づきを与え、多くのものを学べる場(機会)として期待している。
(2)実際の職場を体験し、「キャリア教育」につなげる
実際の職場で体験を積み、働いている人とさまざまな話をすることによって、社会に出て自立していくことに必要な事項を理解することができる。このような機会を得ることにより大学時代に学ぶべきことを考え、目標や目的意識をもって主体的に大学生活を過ごすことができる。「キャリア教育」の一環として、できれば2年次など大学時代に初期に行われることが望ましい。
(3)企業や業界を理解し、「ギャップ」をなくす
就職先についての意識が高まっている中での就業体験である。実際に仕事を体験し、興味のなかった分野にも目を向け、選択の幅を広げることができる。また、実体験を通じて企業研究・業界研究を行うことができるため、文献やセミナーでは得られない深い理解が可能となる。さらに、社会人として求められていることについても体験を通じて具体的に理解することができるので、自分が思い描いていた仕事内容と実際との「ギャップ」が理解できる。これらの結果、就職後のミスマッチ、早期離職の予防につながっていく。
(4)「採用」と結び付ける
3年次には、学生も就職先を意識してインターンシップに取り組んでいる。また、企業も相応の時間とコストがかかる中で実施しており、良い学生に来てもらいたいと考えることは当然のことである。その意味からも、インターンシップ参加学生に対しては、採用の際に「優先権」を与えてみてはどうだろうか。
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 「 課 題 」 と は
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ に 対 す る 「 思 惑 」 の 違 い
インターンシップを実施することによって、学生は企業を知り、働くことの意味や職業観を深く理解することができる。一方、企業は採用を意識したインターンシップであれば、学生の能力や考えを理解した上で選考に臨めるため、採用のミスマッチは減っていくと考えられる。しかし、現状のインターンシップを見ると、受け入れ側の企業と学生側の「思惑」には違いが少なくない。
学生が就職活動で重要な活動として挙げるのは「インターンシップ経験」や「アルバイト経験」「OB・OG訪問」など、社会人と接することで「自己理解」を得る場である。何より、学生は社会人との接点を多く持つことで、早く企業社会を理解し、就職活動を有利に進めていきたいと考えているのである。
ところが、企業はインターンシップには実際の採用選考と連動させないことが前提となっている(日本経済団体連合会の傘下企業)。また、採用ブランディングの高い(採用力のある)大企業では、会社全体の説明や現場での仕事理解を深めるプログラムを組んだとしても、忙しい部署ほどインターンシップにはおよび腰であり、現場の優秀なスタッフの時間を学生に割きたくない、という声も少なくない。
■ 「 採 用 選 考 に 関 す る 指 針 」 の 手 引 き
インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環として位置づけられるものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある。
(一般社団法人 日本経済団体連合会)
他方、日本経済団体連合会に所属していない外資系企業やベンチャー企業、コンサルティング企業などでは、採用と連動したインターンシップを以前から実施している。しかも、相当額の報酬を支払って実施している企業もあり、日本の大企業が採用活動を始める前に、優秀な学生を青田刈りしている現実があるのは周知の通りである。また、起業家精神の高い優秀な学生などは、企業社会の現実をより知るチャンスがあるため、積極的にインターンシップに参加するケースが多いという話をよく聞く。
つまり、日本は企業の社会的責任としての観点や教育的な視点からインターンシップを導入する大企業を中心としたグループがある一方で、採用を意識したインターンシップを行う外資系、ベンチャーなどの企業があるという、二重構造となっているのだ。
日本経済団体連合会では採用・就職活動を加熱させないためにインターンシップの指針として採用につながるものは実施してはいけないと定めているが、実際にインターンシップを経験した学生が、その企業に理念や事業、社員の人たちに共感・共鳴すれば、就職したいと思うのは当然のことである。また、企業としても自社の理念・社風に合う優秀な学生であれば、採用したいと思うのは当然だろう。自由経済の下、こうした人間の意思を制御するのは、難しいように思う。
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ を 実 施 す る 際 の
「 留 意 点 」「 配 慮 」
インターンシップは早期の募集活動となるため、大手企業や有名企業に希望が集中する傾向がある。そのためにも、実施する企業ではそれを覆すような魅力的なプログラムを用意し、差別化する必要がある。実際の募集では、大学への求人票の形で告知したり、インターンシップ専用のメディアやイベントを使って行うことが主流であるが、これだけでは不十分である。ダイレクトメールを配信したり、内定者や若手社員の口コミ、学生サークルなどとの連携を通じた告知も必要となるだろう。学生とダイレクトにコミュニケーションが取れるチャンスは限られている。わずかなコミュニケーションで学生に自社のインターンシップへの参加を決めてもらうためには、募集業務を想定しながら、自社の独自性を明確にし、参加対象となる学生の満足度が高まる要素を加える必要がある。
また、実際にインターンシップを運営していくに際しては、以下のような配慮が求められる。
(1)客観的な選考
インターンシップは一定期間を自社で過ごすため、仕事だけでなく、会社の風土や人間関係への理解が深まる。そのことで、参加者にアドバンテージを付与するケースもある。しかし、短期間のインターンシップだけで将来の職業適応度まで明確に分かるわけではない。インターンシップ参加者と仲が良くなった結果、マッチング度が高くなるのではなく、選考ではより客観的な評価を意識することが大切である。
(2)開催時期への対応
2016年卒の採用活動時期の変更に伴い、現在、インターンシップ開催時期の中心となる夏季休暇に、採用活動が重なることになった。インターンシップの対応に手が回らず、一時的に受け入れの人数が減ることが懸念される。そのためにも、全社を巻き込んだ形の協力体制を要請しておく必要がある。また、選考との“つなぎ”期間の短さから、冬期のインターンシップ(3年生の冬季休暇中に実施)への注目が集まっている。今後、この時期の競争の激化も予想されるので、早めの準備が求められる。
(3)労働関係法規の適用
インターンシップの名目で、学生の労動力を安価な報酬で利用するケースがあると聞く。安易な報酬決定は、自社の信用・ブランドを傷つけることにつながる。また、インターンシップの実態から判断して、労働者とみなされる場合は、賃金や労働条件に関して労働基準法、最低賃金法などが適用されるとともに、実施中の事故に関しても労災保険法の適用があることに留意する必要がある。
個人的な意見ではあるが、学生は「就職サイト」で数限りないエントリーをさせられることよりも、質の高いインターンシップを経験し、企業の本質を知った上での就職活動が望んでいるように思う。
現実問題として、企業の社会的責任としての観点からインターンシップを行う企業と、採用を意識したインターンシップを行う企業があるという二重構造が存在する以上、インターンシップを実施する企業はその目的を明確に謳うことが求められてくるのではないか。そうすれば、参加する学生の思惑と企業の思惑が合致することになり、それぞれの目的が達せられることになる。この点を曖昧にし、現状を無視した一方的な「あるべき論」によるインターンシップでは、実となるものは少ないように思う。
インターンシップは実施する側、受講する側でいろいろな目的がある点を含め、若年層の教育において重要な位置を占めているのは間違いない。その意味でも、大学、企業、そして社会全体が連携し、インターンシップを有効に活用していく必要がある。
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以上、『前編』はインターンシップの現状と課題について見てきた。次回の『後編』では、「採用連動型のインターンシップ」を中心に、実施目的を明確にしたインターンシップの具体的な事例を紹介していく。
解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)
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