「インターンシップ」の現状と課題【前篇1】
2015年6月16日 お仕事 私たち日本生涯現役推進協議会が計画する『生涯現役プロデューサー』登録制度のインターンシップ訓練を研鑽するために、「日本の人事部」サイトが紹介する下記転載紹介の現状・課題を学び、これからの実践研究テーマとして理解を深めておきたい。
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「インターンシップ」の現状と課題 【前編】
“ 質 ” の 高 い イ ン タ ー ン シ ッ プ と は 何 か ?
“ 採 用 ” と ど う 連 動 す る の か ?
新卒採用が激化していく中、政府や経団連からの要望などもあり、「インターンシップ」を取り巻く環境が熱気を帯びている。現実問題として、各企業がインターンシップに期待する効果はさまざまだが、ただ漫然と実施しても効果は上がらず、肝心の学生の集客さえおぼつかなくなる。採用母集団形成、自社PR、学生の職業意識向上、人材育成など、重視する目的によりコンテンツの内容や実施方法を工夫することと同時に、いかに参加学生のニーズを見極め、魅力付けを図るかがインターンシップの成否を左右することになる。今回は、インターンシップの現状と課題と整理すると共に、質の高いインターンシップ、特に近年話題となっている採用連動型のインターンシップをどのように実現するかを考えてみたい。
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 現 状
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ と は ?
そもそもインターンシップは、いつ頃始まったのだろうか? 一般的には、1906年にアメリカのシンシナティ大学が実施した「Cooperative Education」に起源があると言われている。その後、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学などの名門校で同様のインターンシップが行われるようになっていった。本格的に広がったのは第二次世界大戦後であり、現在では世界40ヵ国以上でインターンシップが実施されている。
一方、日本ではどうだろうか? 1990年代前半、バブル経済が崩壊し経済が停滞していく中、企業の新卒大量一括採用時代は終わりを告げ、厳選採用を行う企業が否応なく増えていった。また、グローバル化・IT化の幕開けとともに、求められる人材も変化した。このような新卒採用のあり方の変化に応じる形で1997年、当時の文部省・通産省・労働省の三省が「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」を発表したことにより、日本企業の中でインターンシップが徐々に普及していくことになった。
日本ではインターンシップを「学生が一定期間、企業の中で研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度」として理解されている。アメリカで使用される「Internship:企業が主催し、学生を募集し、採用につなげるもの」と、「Co-op program:大学と企業が提携し、大学教育の一環として行うもの」の両方の意味で用いられ、二つの意味が混在して使用されることが、インターンシップのあり方を複雑化している。
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 導 入 状 況 、 実 施 理 由
近年のインターンシップの導入状況を見ると(「新卒採用担当者調査」レジェンダ・コーポレーション)、2014年では導入している企業が43.8%だったが、2015年には52.8%と半数を超えている。その他のインターンシップ関連の調査を見ても、概ね半数前後の企業が現在、インターンシップを導入しているようだ。 また、2016年卒に関しては、採用活動の後ろ倒しの影響もあって、2月と8月の二つの「山」があることが特徴となっている。
また、前述の調査から、インターンシップを実施する理由を見てみると、上位には「自社や業界に対する理解の促進」33.6%、「早期母集団の形成」31.8%といった事項が挙げられており、以下、「大学との関係強化」17.3%、「社会貢献・地域貢献」13.6%、「社内の活性化」2.7%、「学生の発想の吸収」1.8%となっている。なお、上位の2項目については、2001人以上の大企業では65.0%、60.0%と非常に高い割合となっている。
「就活」が社会問題化されて久しい。学生に過剰な情報提供が行われる一方で、短期に集中する選考スケジュールによって、学生の企業研究の機会を奪うことになり、会社理解が不十分のまま入社への意思決定を迫ることになった。その結果、多くの辞退者や早期離職者を生んだ。インターンシップはこうした問題を解消するものとして期待されているわけで、第1番目の理由「自社や業界に対する理解の促進」は、まさにそのことを言い表している。
また、過熱化する近年の企業の採用戦線では、早期からの接触学生ほど高い評価、高い内定承諾率になるという傾向が強くなっている。欲しい学生を採用するには、インターンシップをはじめとする早期のアプローチが有効というわけだ。これが2番目の理由「早期母集団の形成」の背景である。
さらに、インターンシップの募集・受け入れを通じて、これまで接点のなかった大学や教授陣、就職担当者との関係を構築することができ、その後も続く「関係性」の継続が期待できる。大学側も学生確保の観点から産学提携への機運が高まっており、インターンシップは両者の関係構築には絶好の機会となる。これが3番目の理由「大学との関係強化」である。
もちろん、インターンシップに参加した全ての学生が自社に興味・関心を持つわけではない。しかし、自社の採用をより良くする貴重な“情報源”であると考えれば、インターンシップの実施の意味がより深くなっていくのではないか。学生の実際の行動や能力を見て、自社の選考基準や採用戦略を作り直したり、志望度の上がった要素をヒアリングしてアピール材料を工夫したりするなど、採用活動の改善に役立つことは間違いない。
■ 図 表 1: イ ン タ ー ン シ ッ プ 導 入 割 合(%)
2014年 2015年
導入している 43.8 52.8
導入していない 56.2 47.2
■ 図 表 2: イ ン タ ー ン シ ッ プ 実 施 理 由(%)
全体 2001人以上 501~2000人 500人以下
自社や業界に対する理解の促進 33.6 65.0 32.5 22.0
早期母集団の形成 31.8 60.0 27.5 24.0
大学との関係強化 17.3 30.0 20.0 10.0
社会貢献、地域貢献 13.6 35.0 12.5 6.0
社内の活性化 2.7 10.0 ー 2.0
学生の発想の吸収 1.8 ー 2.5 2.0
*出所:「新卒採用担当者調査」(2014年、2015年)レジェンダ・コーポレーション
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「インターンシップ」の現状と課題 【前編】
“ 質 ” の 高 い イ ン タ ー ン シ ッ プ と は 何 か ?
“ 採 用 ” と ど う 連 動 す る の か ?
新卒採用が激化していく中、政府や経団連からの要望などもあり、「インターンシップ」を取り巻く環境が熱気を帯びている。現実問題として、各企業がインターンシップに期待する効果はさまざまだが、ただ漫然と実施しても効果は上がらず、肝心の学生の集客さえおぼつかなくなる。採用母集団形成、自社PR、学生の職業意識向上、人材育成など、重視する目的によりコンテンツの内容や実施方法を工夫することと同時に、いかに参加学生のニーズを見極め、魅力付けを図るかがインターンシップの成否を左右することになる。今回は、インターンシップの現状と課題と整理すると共に、質の高いインターンシップ、特に近年話題となっている採用連動型のインターンシップをどのように実現するかを考えてみたい。
イ ン タ ー ン シ ッ プ の 現 状
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ と は ?
そもそもインターンシップは、いつ頃始まったのだろうか? 一般的には、1906年にアメリカのシンシナティ大学が実施した「Cooperative Education」に起源があると言われている。その後、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学などの名門校で同様のインターンシップが行われるようになっていった。本格的に広がったのは第二次世界大戦後であり、現在では世界40ヵ国以上でインターンシップが実施されている。
一方、日本ではどうだろうか? 1990年代前半、バブル経済が崩壊し経済が停滞していく中、企業の新卒大量一括採用時代は終わりを告げ、厳選採用を行う企業が否応なく増えていった。また、グローバル化・IT化の幕開けとともに、求められる人材も変化した。このような新卒採用のあり方の変化に応じる形で1997年、当時の文部省・通産省・労働省の三省が「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」を発表したことにより、日本企業の中でインターンシップが徐々に普及していくことになった。
日本ではインターンシップを「学生が一定期間、企業の中で研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度」として理解されている。アメリカで使用される「Internship:企業が主催し、学生を募集し、採用につなげるもの」と、「Co-op program:大学と企業が提携し、大学教育の一環として行うもの」の両方の意味で用いられ、二つの意味が混在して使用されることが、インターンシップのあり方を複雑化している。
◆ イ ン タ ー ン シ ッ プ の 導 入 状 況 、 実 施 理 由
近年のインターンシップの導入状況を見ると(「新卒採用担当者調査」レジェンダ・コーポレーション)、2014年では導入している企業が43.8%だったが、2015年には52.8%と半数を超えている。その他のインターンシップ関連の調査を見ても、概ね半数前後の企業が現在、インターンシップを導入しているようだ。 また、2016年卒に関しては、採用活動の後ろ倒しの影響もあって、2月と8月の二つの「山」があることが特徴となっている。
また、前述の調査から、インターンシップを実施する理由を見てみると、上位には「自社や業界に対する理解の促進」33.6%、「早期母集団の形成」31.8%といった事項が挙げられており、以下、「大学との関係強化」17.3%、「社会貢献・地域貢献」13.6%、「社内の活性化」2.7%、「学生の発想の吸収」1.8%となっている。なお、上位の2項目については、2001人以上の大企業では65.0%、60.0%と非常に高い割合となっている。
「就活」が社会問題化されて久しい。学生に過剰な情報提供が行われる一方で、短期に集中する選考スケジュールによって、学生の企業研究の機会を奪うことになり、会社理解が不十分のまま入社への意思決定を迫ることになった。その結果、多くの辞退者や早期離職者を生んだ。インターンシップはこうした問題を解消するものとして期待されているわけで、第1番目の理由「自社や業界に対する理解の促進」は、まさにそのことを言い表している。
また、過熱化する近年の企業の採用戦線では、早期からの接触学生ほど高い評価、高い内定承諾率になるという傾向が強くなっている。欲しい学生を採用するには、インターンシップをはじめとする早期のアプローチが有効というわけだ。これが2番目の理由「早期母集団の形成」の背景である。
さらに、インターンシップの募集・受け入れを通じて、これまで接点のなかった大学や教授陣、就職担当者との関係を構築することができ、その後も続く「関係性」の継続が期待できる。大学側も学生確保の観点から産学提携への機運が高まっており、インターンシップは両者の関係構築には絶好の機会となる。これが3番目の理由「大学との関係強化」である。
もちろん、インターンシップに参加した全ての学生が自社に興味・関心を持つわけではない。しかし、自社の採用をより良くする貴重な“情報源”であると考えれば、インターンシップの実施の意味がより深くなっていくのではないか。学生の実際の行動や能力を見て、自社の選考基準や採用戦略を作り直したり、志望度の上がった要素をヒアリングしてアピール材料を工夫したりするなど、採用活動の改善に役立つことは間違いない。
■ 図 表 1: イ ン タ ー ン シ ッ プ 導 入 割 合(%)
2014年 2015年
導入している 43.8 52.8
導入していない 56.2 47.2
■ 図 表 2: イ ン タ ー ン シ ッ プ 実 施 理 由(%)
全体 2001人以上 501~2000人 500人以下
自社や業界に対する理解の促進 33.6 65.0 32.5 22.0
早期母集団の形成 31.8 60.0 27.5 24.0
大学との関係強化 17.3 30.0 20.0 10.0
社会貢献、地域貢献 13.6 35.0 12.5 6.0
社内の活性化 2.7 10.0 ー 2.0
学生の発想の吸収 1.8 ー 2.5 2.0
*出所:「新卒採用担当者調査」(2014年、2015年)レジェンダ・コーポレーション
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