【 ライフ・ベンチャーのすすめ 第 2 章  夢をつかみとる人生 】

◎  自 己 へ の 挑 戦 と 生 き 甲 斐 の あ る 人 生

  「この日の感動を生涯忘れず、皆様からいただいた恵みにお応えする意味で、これからは少しでも人のために役立てる人生を、二人で築き上げることをここに誓います・・・」

  緊張で、声は上ずり、やや震え気味ではあったが、私は新妻の手を握ったまま、お礼の言葉をいい尽していた。

  今から二十年前、兵庫県下にある阪急沿線塚口のキリスト教会で挙げた私の結婚式の光景である。

  それから幾星霜を重ねながら、不思議とあの時の情景は色褪せず、むしろ思い出すたびに、かえって輝きを増すように思えてならない。

  小さな会堂の式場にぎっしり座った百四十人あまりの列席者を前にして,眩い気持ちでいっぱいだった。すでに父は亡かったが、顔をくしゃくしゃにした母がいた。近親者も駆けつけ、上司や先輩の多くも、私たちのささやかな旅立ちを祝ってくれていた。

  生まれてこのかた、いろいろなことでずっとお世話になった人びと、そしていつも導き励ましてくれた参加者の一人ひとりに、心からの感謝をしたい気持ちだった。

  この時を期して、私は密かにある決意をした。

  それは、私が家庭をもつというだけで、これだけ多くの人びとの世話になり、恵みを与えられてきた。その受けてきた恵みを十分に役立たせ、今度はそれをお返ししえるような家庭をつくっていこうという “ 自己宣言 ” のようなものだった。そのためには、自分のはっきりした生き甲斐をみつけ、それをこの世に残したいという思いだった。

  年齢もちょうど三十歳になっていた。人生のトバ口で祝福されて結婚できたのも、何かの啓示のように思われた。これからの生涯を、この妻と手を携え合って、生き甲斐をみつけ、毎日々々生き生きと過ごしていこうと肝に銘じたのである。

  今にして思えば、少々照れ臭い “ 気負い ” だったかも知れないが、未だに自分の明るい結婚式を鮮明に思い出すというのは、あのときの “ 決意 ” があったからかもしれない。 つづく

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