名内氏に学ぶ:「有言実行」と「不言実行」
2015年3月4日 お仕事 日立ソリュ―ジョンズ/PREMIUM SERVICE WEB プレミアムサービスウェブより、本日・明日は名内泰三氏(注)から、『生涯現役プロデユーサー』仮登録者の研鑽の学びとして、以下のことを学んでみたいと存じます。
【URL=https://premium-service.jp/psw/premium/fesh_viewpoint/47/index.html】
注:【名内泰三(なうち・たいぞう)氏:プロフィール】
1939年 滋賀県生まれ、1961年 京都大学工学部電気工学科卒業、同年 株式会社 日立製作所 入社、1990年 同社 ソフトウェア工場長、1993年 同社 情報システム事業部長、1995年 同社 取締役、1997年 日立システムエンジニアリング株式会社 取締役社長、2000年 株式会社日立システムアンドサービス 取締役社長、2003年 同社 顧問、2005年 退職。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
多数のステークホルダーが関係する情報システムにおいては、各関係者が何とか納得できる妥協解を見付けだすことが、システムをまとめるキーポイントである。その解を見付けるには、色々な人の立場、考え方、見方を理解し、対策を柔軟に考える必要がある。そのためにも、絶えず、たてから、よこから、ななめから、上から、下から、表から、裏から、と多角的な視点で対象を見る複眼思考が求められる。「たてよこななめPM論」では、複眼思考のヒントを語るいくつかの事例を紹介してゆきたい。
不 言 実 行
「実行力がないくせに口先ばかり達者であったり、気楽に約束するが約束を直ぐにやぶってしまうようでは、相手に迷惑をかけるし、信用もなくしてしまうので、あれこれ言う前に、まずは実行してしっかり結果を出すべきだ」と昔から言われてきた。
会社などでも、自分の力以上の仕事に、あえて手を挙げることは、自己顕示欲や出世欲を他人に感じさせたり、出世欲が見えたりして、とかく周りから嫌われ、結果的に失敗につながる例も多い。そのため、あえてかつては自ら先に手を挙げるようなことはせず、上司の指示を受けてから行動に移る人も多かったように思う。挑戦的なことを言って空約束することよりも、言われたことを地道に確実に展開して、しっかり成果を上げる「不言実行」が、多くの日本人の美学でもあったのだ。
中国でも、老子は、「本当にわかっている者は口に出さず、口に出して言う者は本当は分かってない」として、 知者不言、言者不知 [読み] 知る者は言わず、言う者は知らず ・・・・と言っている。
口先先行は昔から評判が悪かったし、慎まなければならないこととされてきたのである。
有 言 実 行
しかし、個人活動や個人生活においては事前に何かを言明したり、約束したりする必要はないかもしれないが、組織活動においては、お互いに約束をしながら、皆がその約束を守っていかない限り組織は成り立たない。
一般に会社組織にあっては、予算期ごとに事業推進のための実行予算を作り、その予算に随って、約束予算を達成すべく皆が努力をして事業を展開していく事になる。複数の関係者で分業して仕事を遂行する以上は、各関係者が、自分のやるべき事、やるべき期限を事前に約束しない限り仕事はまとまらないからである。
各人が黙っていて、できた時にその次の役割の人に渡せばよいなどと言っていれば、およそ組織は成り立たない。それ以上に、特に顧客から注文を頂いてから生産する受注ベースの案件に対応する場合は、受注時に顧客との間で納期の約束を交わす事が必須の条件であることは論を待たない。「できたとき納入いたします」では、受注は不可能になってしまうであろう。まさに、「有言実行」が求められるのである。
真 の 約 束 履 行
また、顧客とITシステムの開発においても、初めに顧客と約束した機能を約束納期に実現することが、ITシステムベンダーのプロジェクトマネジャーに課せられた課題である。しかし、ほとんどのITシステム開発プロジェクトでは、最初から約束内容が明確になっていることは少ないので、まずは約束内容を固める事が「約束を守る」ポイントだという自己矛盾が生じる。
顧客から言われたことをやるのが約束の実現だと考えてしまっては、とてもビジネスにはならず、顧客とベンダーが何とか妥協できる解を求めて必死に頑張ることこそ「真の約束履行」であると思う。そのためには「不言実行」だけでは行き詰まってしまうはずである。SEはただ、顧客の言われるままひたすら頑張るというのでなく、出来る限り望ましい妥協解を求めてどんどん提案していかなければならない。当然、提案する以上は、出来もしない提案をしていては話にならないわけで、提案が受け入れられたならば「有言実行」で、確実に実現させなければならないのである。
「有言実行」は、言った以上は実現させなければならないという組織としての義務でもあるが、言ってしまったことの実現に向かって努力することが、SE個人としての成長にも繋がるチャンスだと前向きにとらえて対処したい。
何も約束しなければ地道に努力するだけですむが、約束した以上は実現しなければならないという立場に追い込まれることによって、必死に調査したり、考えたりせざるを得ない状態になるのが何よりの効果なのである。自発的に勉強するのはなかなかできないことであるが、追い込まれれば嫌でも勉強したり、考えたりすることになるからである。
また、顧客とベンダーが何とか共存できる妥協解を求めて色々提案するだけでなく、顧客の今後にとって役立ちそうな色々な提案をしていくという「有言」もSEにとっては大事な仕事である。
目の前の問題解決だけでなく、顧客にとって、どういうシステムを展開していけばよいかについて、色々な角度から考え、提案をしていけば、次回のシステム展開にも繋がり、提案するSEの評価向上にもなるはずである。SEの評価が高まれば信用も高まるので、ベンダー側からの目前の請願も受け入れてもらいやすくなる。
一方、ITビジネスの世界で堅持したい「不言実行」の大事な一つは、「品質の確保」である。品質については、特に約束がなくても、地道に品質を確保、向上する努力を続けることが必要である。特に、設計過程でしっかりした高品質設計をめざし、美しい設計に努めれば、システム稼働後の事故が減るし、稼働後のシステム改造の費用削減や、事故防止にも役立つはずである。品質は約束して実現するだけでなく、何も言わなくても「不言実行」で、世界に誇れる高品質システムの実現に貢献したいものだと思う。
【URL=https://premium-service.jp/psw/premium/fesh_viewpoint/47/index.html】
注:【名内泰三(なうち・たいぞう)氏:プロフィール】
1939年 滋賀県生まれ、1961年 京都大学工学部電気工学科卒業、同年 株式会社 日立製作所 入社、1990年 同社 ソフトウェア工場長、1993年 同社 情報システム事業部長、1995年 同社 取締役、1997年 日立システムエンジニアリング株式会社 取締役社長、2000年 株式会社日立システムアンドサービス 取締役社長、2003年 同社 顧問、2005年 退職。
---------------------------------------------------------------------------------------------------
多数のステークホルダーが関係する情報システムにおいては、各関係者が何とか納得できる妥協解を見付けだすことが、システムをまとめるキーポイントである。その解を見付けるには、色々な人の立場、考え方、見方を理解し、対策を柔軟に考える必要がある。そのためにも、絶えず、たてから、よこから、ななめから、上から、下から、表から、裏から、と多角的な視点で対象を見る複眼思考が求められる。「たてよこななめPM論」では、複眼思考のヒントを語るいくつかの事例を紹介してゆきたい。
不 言 実 行
「実行力がないくせに口先ばかり達者であったり、気楽に約束するが約束を直ぐにやぶってしまうようでは、相手に迷惑をかけるし、信用もなくしてしまうので、あれこれ言う前に、まずは実行してしっかり結果を出すべきだ」と昔から言われてきた。
会社などでも、自分の力以上の仕事に、あえて手を挙げることは、自己顕示欲や出世欲を他人に感じさせたり、出世欲が見えたりして、とかく周りから嫌われ、結果的に失敗につながる例も多い。そのため、あえてかつては自ら先に手を挙げるようなことはせず、上司の指示を受けてから行動に移る人も多かったように思う。挑戦的なことを言って空約束することよりも、言われたことを地道に確実に展開して、しっかり成果を上げる「不言実行」が、多くの日本人の美学でもあったのだ。
中国でも、老子は、「本当にわかっている者は口に出さず、口に出して言う者は本当は分かってない」として、 知者不言、言者不知 [読み] 知る者は言わず、言う者は知らず ・・・・と言っている。
口先先行は昔から評判が悪かったし、慎まなければならないこととされてきたのである。
有 言 実 行
しかし、個人活動や個人生活においては事前に何かを言明したり、約束したりする必要はないかもしれないが、組織活動においては、お互いに約束をしながら、皆がその約束を守っていかない限り組織は成り立たない。
一般に会社組織にあっては、予算期ごとに事業推進のための実行予算を作り、その予算に随って、約束予算を達成すべく皆が努力をして事業を展開していく事になる。複数の関係者で分業して仕事を遂行する以上は、各関係者が、自分のやるべき事、やるべき期限を事前に約束しない限り仕事はまとまらないからである。
各人が黙っていて、できた時にその次の役割の人に渡せばよいなどと言っていれば、およそ組織は成り立たない。それ以上に、特に顧客から注文を頂いてから生産する受注ベースの案件に対応する場合は、受注時に顧客との間で納期の約束を交わす事が必須の条件であることは論を待たない。「できたとき納入いたします」では、受注は不可能になってしまうであろう。まさに、「有言実行」が求められるのである。
真 の 約 束 履 行
また、顧客とITシステムの開発においても、初めに顧客と約束した機能を約束納期に実現することが、ITシステムベンダーのプロジェクトマネジャーに課せられた課題である。しかし、ほとんどのITシステム開発プロジェクトでは、最初から約束内容が明確になっていることは少ないので、まずは約束内容を固める事が「約束を守る」ポイントだという自己矛盾が生じる。
顧客から言われたことをやるのが約束の実現だと考えてしまっては、とてもビジネスにはならず、顧客とベンダーが何とか妥協できる解を求めて必死に頑張ることこそ「真の約束履行」であると思う。そのためには「不言実行」だけでは行き詰まってしまうはずである。SEはただ、顧客の言われるままひたすら頑張るというのでなく、出来る限り望ましい妥協解を求めてどんどん提案していかなければならない。当然、提案する以上は、出来もしない提案をしていては話にならないわけで、提案が受け入れられたならば「有言実行」で、確実に実現させなければならないのである。
「有言実行」は、言った以上は実現させなければならないという組織としての義務でもあるが、言ってしまったことの実現に向かって努力することが、SE個人としての成長にも繋がるチャンスだと前向きにとらえて対処したい。
何も約束しなければ地道に努力するだけですむが、約束した以上は実現しなければならないという立場に追い込まれることによって、必死に調査したり、考えたりせざるを得ない状態になるのが何よりの効果なのである。自発的に勉強するのはなかなかできないことであるが、追い込まれれば嫌でも勉強したり、考えたりすることになるからである。
また、顧客とベンダーが何とか共存できる妥協解を求めて色々提案するだけでなく、顧客の今後にとって役立ちそうな色々な提案をしていくという「有言」もSEにとっては大事な仕事である。
目の前の問題解決だけでなく、顧客にとって、どういうシステムを展開していけばよいかについて、色々な角度から考え、提案をしていけば、次回のシステム展開にも繋がり、提案するSEの評価向上にもなるはずである。SEの評価が高まれば信用も高まるので、ベンダー側からの目前の請願も受け入れてもらいやすくなる。
一方、ITビジネスの世界で堅持したい「不言実行」の大事な一つは、「品質の確保」である。品質については、特に約束がなくても、地道に品質を確保、向上する努力を続けることが必要である。特に、設計過程でしっかりした高品質設計をめざし、美しい設計に努めれば、システム稼働後の事故が減るし、稼働後のシステム改造の費用削減や、事故防止にも役立つはずである。品質は約束して実現するだけでなく、何も言わなくても「不言実行」で、世界に誇れる高品質システムの実現に貢献したいものだと思う。
コメント