このメールは 日本生涯現役推進協議会 様宛にお送りしました。
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    J.I.メールニュース No.693 2015.02.19発行 
     「山からの便り・美山森林学校・4」 
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<巻頭寄稿文>
  「山からの便り・美山森林学校・4」 
                 美山森林学校校長  小林 直人
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美山森林学校3※で書いた谷川さんは、今回も森林学校に何の前触れもなくやって来た。

森林学校の開催はメ-ルでやり取りしているので、参加出来る人の顔ぶれは事前に判っている筈なのだが・・・。犯人は、木構造研究所の田原所長だった。彼が開催を知らせていたのだ。多分、前回彼女が来た時の、メリハリの効いた弁舌に共鳴するものがあったのだろう。

パスカルの人間観察を援用すると、幾何学の精神を持ち合わせる二人ということになろうか。共通する性向は、判断の速さと迅速な行動である。

谷川さんは、原爆の紙芝居を持ってアメリカへ行って来たのだ。原爆の非人道性について、アメリカは日本と異なる評価をする国である。終戦を早める意義があったのだと。

その国の小学生に紙芝居を見せて来たのである。その心意気と労作を生み出す努力を、重く受け止めなければならないだろう。

それでも僕の反応は、彼女の神経を逆なでするものだったのだ。

理由ははっきりしている。僕は「正義を語る人」に反発したのだと思う。

審問の語法は、宗教裁判や人民裁判で用いられた。裁く者は常に正しく、絶対間違うことがない。「正義の人」に反論することなど許されない。

ここに、三つの例をあげて僕のあいまいな気持ちを述べておきたい。

日本熊森協会は、絶滅の危惧にある熊を保護する団体である。全国に支部があって、雑木の山を買い集めている。一頭で100ヘクタ-ルの生息圏と言われるのだから雑木のパッチワ-クでは間に合わないと思うのだが、おかまいなく突き進んでいる。その行動力はフォレストシェパ-ドみたいだ。

熊の奥山放獣方式で知られる米田一彦は、銃で撃たれた熊が、檻に溜まった自分の血を舐める様子を見てこう書いている。(クマはやがて息絶えるのだが)。「お前も里山に二度出没さえしなかったら、あの向こうに連なる山々を眺める事が出来ただろうに」と。

マタギの工藤光治は、仕留めた熊の鼻先を撫でながら、「お前もよく頑張ったなあ」と労を労っている。

大好きな木イチゴを夢中で食べている時、母熊はそっと姿を消して親離れを実行する。小熊はワ-と泣き出したい寂しさを感じるに違いないけれど生きて行く。
パスカルは「繊細の精神」にも言及していたのである。
正義の人から繊細の心を聴いたことがない。
※参照メルマガ NO.679 山からの便り・美山森林学校3 
http://www.kosonippon.org/mail/bk_2014/bk141106.php
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小林 直人(こばやし なおと)
1941年生まれ。同志社大学文学部卒業。京都府南丹市で林業を生業にする。美山森林学校校長。
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