退  職  貧  乏  か  安  泰  老  後  か 
        家  計  の  再  点  検  は  5  0  代  ま  で  に
http://www.nikkei.com/money/column/nkmoney_tokushu.aspx?g=DGXMZO803954900212201400000・0

 退職貧乏になるか、安泰老後をゲットするか。最終ラウンドにして勝敗を決するのが50代の過ごし方だ。晩婚化の今、50代は教育費のピーク。教育費負担に青息吐息のまま年金生活に突入すると、大変なことになる。家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、50代の有益な乗り切り方を聞いた。

 「50代は老後資金のため時」という、長らく語り継がれてきたゴールデンルールが崩壊しつつある。
 日本女性が第一子を出産する年齢の平均は30.4歳(2013年)。30年前から約4歳上昇している。夫が3歳年上とすると、第一子が大学を卒業する際、夫は55歳。さらに第二子がいれば、第二子が巣立つのは夫の定年直前だ。
 家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、「最近の50代は、年々教育費と老後資金のバランスを取るのが難しくなっている」と指摘する。
 「年収が1500万円近くありながら、貯蓄が200万円という相談者がいた。聞けば子供2人が同じ私学に通っていて、半期で320万円近い学費が必要だという。そのために毎月54万円ずつ積み立てをしており、とても老後資金まで手が回らない、と」。
■ 教 育 費 の 割 り 切 り も
 そもそも、子供が大学生になって初めて学費のやりくりを考えるのでは遅い。「本来なら、高校までの12年間に積立などで半分くらいは用意しておく必要がある」と横山さんは言う。しかし幸い今は奨学金制度が充実しており、親が高額所得者でも利用できるものも多い。
 「50代の親なら子供のことはある程度割り切って、その分を老後資金に回す。もっとも収入は決まっているわけだから、50代からため始めても限度がある。その場合は、60歳前に目標額の60~70%をためられれば良しとすべき」。
お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著作は累計94万部となる。近著に『手取り17万円からの貯金の教科書』(宝島社)
 50代はリタイア前にお金の使い方を見直す最後のチャンスでもある。ほとんど貯蓄のできない家計のまま、年金生活に突入したら大変だ。このタイミングで横山さんの元を相談に訪れる人も少なくないが、気になるのは根拠のない自信から「うちの家計は無駄がないから、見てもらわなくて大丈夫。保険だけ見直して」というタイプだという。
 そういう人に限って、重大な問題点が見逃されていることが多い。見栄を張って大盤振る舞いをする、義理の付き合いをだらだら続けるなど昔ながらの出費がかさむのも、この世代の特徴だ。
 一方で、家計管理に全く関心のない人もいる。横山さんはそういう人には、「何にどれくらいお金を使っているのか、ざっくりとした家計簿をつけてみるといい」と勧める。家計簿アプリなども多数存在するが、普通のやり方だとギブアップするのも早い。長続きしている人の家計簿には、家計管理と性質の似た「ダイエット日誌」や「家の整理整頓記録」などとうまく組み合わせたものが多いという。
 お金の使い方を把握するに当たり、横山さんが提唱しているのが使途を「消費」「浪費」「投資」に3分類する方法だ。投資には文字通りの投資や貯蓄の他、自分への投資も含む。さらに横山さんは、「浪費をするのも大事なこと」と説く。
■ 老 後 突 入 前 に 夫 婦 で 現 状 確 認 を
 3分類は主観によるので、最初は飲み代や週刊誌代など何でもかんでも投資に振り分ける人が多い。しかし、しばらく続けることで自分なりの判断の軸ができ、月収比で消費70%、投資25%、浪費5%の黄金率に収斂されていくという(高収入の人は消費の比率が低く、その分、投資が高くなる)。
50代までにやっておきたいこと3ヵ条 
 その1   年金生活に入る前に 今の家計を再点検する
 その2   夫婦で定年後や お金のことについて話し合う
 その3   金融機関との付き合い方を見直し、投資の経験を積む

 横山さんは、この判断軸を持てることが重要だと話す。「老後が不安だという人は、貯蓄が1億円を超えても根本的な不安が解消するわけではない。不安を消してくれるのはむしろ、『苦手な家計管理ができるようになった』『資格が取れて稼げるメドが立った』という自分の変化や成長がもたらす自信にある」。
 夫婦で定年後やお金の話をしておくことも重要だ。共働きで相当の収入がある夫婦がある日、互いの貯蓄残高がほぼゼロだと知って驚愕したという例もある。
 50代ともなると夫婦間に隙間風が吹き、ほとんど会話のない家庭もあるかもしれない。お金の話は小競り合いのきっかけになり得る半面、相手の経済感覚や思い描く老後を知り、夫婦一丸となって老後資金作りに取り組む下地を作ってくれる。
 金融機関やお金のプロとどう付き合うかも、50代のうちに取り組んでおきたい課題の一つだ。60歳で多額の退職金を手にし、銀行や証券会社に言われるがまま投資して失敗したら取り返しがつかない。押しの強いセールスに弱いという自覚があるのならば、ネット銀行やネット証券に資産をシフトしていくのも一法だろう。
 その上で、投資未経験者であれば少額から投資を始めてみる。自分で体験してみないと分からないことは、案外多いものだ。結果として損失を出したとしても、「収入のある50代のうちなら、十分、リカバーできる」(横山さん)。
(日経マネー 森田聡子)

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