たかが「生涯現役」されど「生涯現役」№6

「生涯現役」と人間学 その②

「 4 0 代 、 5 0 代 の 生 涯 現 役 」 を 考 え る ~ 
          団 塊 世 代 生 涯 現 役 モ デ ル の 終 焉 ~

                         冨山社会人大楽塾 代表 柳原 正年

  団塊の世代以上の「終身雇用」という幻想にもとづく生涯現役モデルは、一つのレールを走る「就社」スタイルだった。男女ともに20歳前後で就職し、20代で結婚すると、女性の多くは寿退社、主婦として家庭に入った。一方男性はそのまま会社で働き続け扶養家族の生計を支える。子供が生まれある程度大きくなると、女性はM字型社会復帰、パートなどで家計を補助、夫は定年まで勤めあげて退職、その後は年金生活を送るというライフスタイルが基本であった。

  このモデルは戦後生まれの世代(1940年~1960年頃に生まれた世代)の活躍とともに確立したが、このシステムは1990初頭のバブル崩壊により限界を迎える。それはバブル崩壊による会社生き残りのための村社会の崩壊序曲であり、「会社に生涯守ってもらえる」という幻想への気付でもあった。

  団塊世代(1947年~1949年のベビーブーム生まれ)型・キャリアモデルのコアであった終身雇用制度は、労使協調と生産性の向上による優れた製造システムを実現したが、その後経済の主体がサービス業やIT産業に移行、グローバル化によるビジネスモデルの変化に対応できなくなったのである。団塊の世代型「終身雇用」モデルは変革を押しつぶしその後日本企業は衰退へと追い込まれる。

  団塊の世代型キャリアモデルでは「就職ではなく就社する」が原則で、村社会を形成してきた。その後続いた20年不況はこの村社会の掟を守るためのあがきであった。「終身・就社」するシステムの温存は団塊ジュニア(1971年~1974年)以上の世代は何とか逃げ切れる(恩恵を享受)かもしれないが、それ以下の若い世代をこのモデルで支え切れない状態である。

  また「平均寿命の延びに伴う年金制度の危機」や「政府の財政危機」など、若い世代に具体的に迫る危機もある。「平均寿命の延び」や「終身雇用」に迫る危機である。ITの進化とグローバル化により、会社寿命は極端に短くなっている。東証一部上場企業には創業100年を超す会社も残っているが、一般的には30年~10年とも言われている。特にIT産業は10年が生き残り勝負の年数だという。

  年金支給開始年齢が65歳から70歳になろうとしている現状では、50年働くのが当たり前(20歳~70歳)という時代が来ると思われる。すなわち平均的な会社寿命より、個人の現役期間の方が長いことになる。

  当然終身雇用を軸としたキャリアモデルが崩壊する。そうなれば、自分が働いている間に会社が潰れるか、経営危機に陥りリストラされるか覚悟しておかなければならない。

  たとえ上場の大企業に正社員として就社していてもある日突然経営危機に陥り、リストラされ再就職ができず、年金でも暮らせないという悲惨な運命をたどるかもしれない。

  一つの会社に命運を預けるリスクを克服し、新しい働き方を考えることが、これからの40代50代に求められる。

  会社・年金・国にも頼れない、30代以下の世代については大変深刻な事態であるが、本コラムでいう若者向け(40代・50代)生涯現役「アクティブライフ」活動は、今後生涯現役推進協議会が構想する「生涯現役プロデューサー」が新システムとして構築提案するであろう。

  新生涯現役人材とは、自らの意志で特定の領域を選んで人間関係を構築でき、知識や技術を磨きながらマーケットで評価される「自分ブランド」を築ける人、すなわち「自らの力」で時間を費やし、生き抜くための環境を作りだす力を醸成することであろう。

  次回は「いよいよ始まる生涯現役による地方創生」~「日本生涯現役学会」の設立と「実践道場(ネバーギブアップ塾)」プロデューサーの全国展開への期待~を述べたい。

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