井上 仁氏:フクシマ復興応援Network発信
2014年9月9日 お仕事課題設定:農林省認定「 環 境 保 全 型 農 法 」
「 ラ ジ ア ン ト ハ ウ ス 有 機 農 法 」 の 提 案 を 受 け て
「ラジアントハウス有機農法」とは?
「ラジアントハウス有機農法」の基本は、土壌加温でバランスのよい微生物層をつくる農法である。真冬、ハウスの中は別世界。葉はしげり実がたわわ。土からたちのぼる香りと温かみに包まれながら健康野菜の栽培に心地よい汗をながす。あの懐かしい味と香りの、そして色つやと日持ちが良い一品の収穫は今が最盛期。この環境を作り出すのが「深層地中加温」である。
この有機栽培の作柄を左右するのは土壌微生物。つまり作物に直接影響をおよぼす共生(有用)菌と寄生(病原)菌、前作の残根や堆肥を分解する腐生(有用)菌などである。雑多でおびただしい数の菌が干渉(きっ抗)しあいながら、ひとつの微生物相をつくっている。
作物が発病するのは、このきっ抗がくずれ、病原菌が優勢となるからで、この相を翌年にもちこすと連作障害がおこる。「ラジアント有機農法」は、このような微生物の相と働きを、土壌を加温することによりバランスのよい微生物相をつくる農法である。本農法は、平成12年9月12日、農林水産省によって、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な「環境保全型農業」であると認定されている
(社)日本施設園芸協会による「深層地中加温」の評価
農林水産省の補助事業として、(社)日本施設園芸協会が平成10年から5年間、施設園芸における先端技術の開発の現状と現場への可能性を調査し、新しい施設園芸経営体の確立を資する目的で、「最先端技術実用化推進事業」を実施している。
その中で「ラジアント有機農法」における「深層地中加温」は、「温・湿度制御検討会」で取り上げられ、平成16年3月、同協会発行の「最先端施設園芸技術実用化推進事業報告書」に、次ぎのように(一部抜粋)記載されている。
○「深層地中加温」とは、従来から行われている野菜・花等の栽培で根域付近の比較的浅い(15~20cm)土層に発熱体を埋設して地温を高める地中加温に対して、格段に深い(50~90cm)土層に発熱体を設置し、広範囲の土層を加熱しようとするものである。
○本法は、平成5年頃から地中に樹脂パイプを埋設し、熱媒体を循環させる方式により、厳寒期に凍結の懸念、あるいは埋設したまま耕うん作業する場合の損傷の危険などを回避するねらいで、主に寒冷地などにおいて、地中加温として実用に供され始めている。
○その後、一部の花き類の促成栽培において、冬期の生育適地温を確保するという本来の目的に加えて、夏期の太陽熱利用と併用して土壌消毒法として利用することが考えられ、多目的利用による効果が上がるようになり、その特徴の認識が高まるとともに、導入事例が次第に増加しつつある、新しい技術である。
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被 災 者 の 生 活 再 建 へ の 道 筋 づ く り に 向 け て
「 ラ ジ ア ン ト ハ ウ ス 農 法 」 の
実 証 栽 培 試 験 プ ロ ジ ェ ク ト 案
1 福 島 県 内 で の 3 地 域 別 実 証 試 験 栽 培 作 物 案
「ラジアントハウス有機農法」の実証栽培試験を実施するにあたり、福島県内の3地域別「試験推奨作物案」を次の通りとする。
①浜通り地域
浜通りは太平洋沿岸で日射量も豊富で「深層地中加温」のみで栽培可能な背丈の低いイチゴ、メロン、スイカ、アスパラ、ほうれん草が適している。この地域は宮城県のイチゴ生産地亘理町の南方に位置している。その亘理町に隣接している相馬市でも栽培実績のある「イチゴ」を実証試験の1番候補としたい。
②中通り地域
中通りでは矢吹町、須賀川市で実績のある背丈の高い「トマト、キュウリ」の実証試験を一番候補としたい。ただし、地上部の「加温パイプ」による実証栽培検証の確認が不可欠である。
③会津地域
これまでに、喜多方市で「ホワイトアスパラガス」の3月出荷を実現している。この地域では、冬季の積雪による日照不足を利用する「アスパラガス」の栽培を検証したい。
2 「 3 つ の 実 証 栽 培 試 験 」 の 実 施
上記の3地域別「実証栽培試験作物案」を前提として、ラジアント農法の発明者杉浦武雄さんの指導のもと、10アール程度(1反、1000㎡)の「空きハウス」を利用した実証栽培試験を実施し、栽培方法、生育状況を確認し、情報の共有化を図る。
①「既設イチゴ栽培ハウス」でのイチゴ栽培試験
イチゴ栽培農家を対象とする。通常定植は9月初旬~9月末で、既に畝作りは終えているため、土中60cmへのパイプの埋設はできない。今年は苗の下部に加温パイプを添わせる方式で地中加温の効果と省エネを確認する栽培実証試験を行う。40~60cm深さへのパイプ埋設と土壌消毒は来年の提案とする。
②「仮ハウス」、「空きハウス」でのイチゴ栽培試験
イチゴ栽培経験者を募り、「仮ハウス」または「空きハウス」で本法の効果を確認する栽培実証試験を行う。
③「空きハウス」でのその他野菜栽培試験
被災地農家出身者を対象に、これまで栽培経験のあるほうれん草等の作物について、「空きハウス」で本法による栽培実証試験を行う。
3 実 証 実 験 別 必 要 設 備 お よ び 必 要 費 用 概 算
①仮ハウス
1000㎡規模で約1000~1300万円
浜通りで積雪の心配ない地域での価格を地元の農協に問合せる必要がある。
②HP熱源による深層地中加温方式
○イチゴを含む「A作物」の場合は500万円。
HP1台、60cmの土壌掘削、パイプの埋設作業費用等。
○「B作物」の場合は600万円。
○「C作物」の場合はHPを1台増やし、ハウス内加温パイプを下段から3段まで設置す
るため400万円増となる。
③その他
○機械室兼作業室
ハウスに隣接し、内扉、外扉を有する約200~300㎡
○HPのため電源は電力のみ。2台のHPで消費電力は約9KW。
備考
最初の実証栽培試験においては、低コスト化、準備工期の短縮の面から、「HP」の代わりに「灯油ボイラー」を使用することが望ましい。イチゴが対象の場合、1000㎡のハウスであれば、設備費約200万円程度、約1か月の工期で栽培試験を開始することができる。
4 実 証 栽 培 試 験 の 評 価
上記の「3つの栽培実証試験」において、「燃料消費量」、「収穫量」、「土壌消毒実施の効果」、「消毒期間の日数」、「消毒にかかる燃料費」、「植物残渣の土壌への鋤き込み手順とかかわる人数」等のデータの収集、整理、分析を行う。特にイチゴについては、栽培地温の最適化で、ハウス内温度3~5℃に保つことにより、美味しく、大きく、高い糖度のイチゴが生産できるかどうかを確認する。
これら結果を踏まえて、次の段階の実証栽培試験では、10アール規模の2つのモデルハウスの建設を提案する。さらに被災者、被災自治体、周辺自治体の参加を募り、収益、省エネ、省力等の実際的な成果を確認し、当農法のフクシマ復興再生事業としての可能性を確認することとしたい。
5 実 証 栽 培 試 験 の 実 施 体 制 づ く り
農林水産省により「環境保全型農業」に認定されている「ラジアントハウス有機農法」が事故原発被災者の自立、生活再建につながる可能性を確認するとともに、その後の県内過疎地の活性化施策と一体となった「フクシマ復興再生事業」としての推進を応援する目的で、次の通り実証栽培試験の実施体制をつくる。
①組織の名称
ラジアントハウス有機農法
フ ク シ マ 実 証 栽 培 試 験 プ ロ ジ ェ ク ト
②プロジェクト構成メンバー
当農法の実証栽培試験について、被災住民・自治体、周辺住民・自治体、その他関連組織 団体、国(復興庁福島復興再生総局)、福島県等に広くPRし、プロジエクトへの参加メンバーを募る。
③プロジェクトの役割課題
○実証栽培試験に必要な「空きハウス」の確保
○必要な施設、工事の見積もり、導入
○実証栽培試験案の作成および必要経費の見積もり
○実証試験要員の確保
○実証試験に必要なフアンドの調達
○実証栽培試験の実施指導
○実証栽培試験のデータ整理
○過疎地対策と一体となったフクシマ復興再生事業としての展開構想の提案
「深層地中加温方式」による野菜や花卉の実証栽培試験への取り組みは、原発事故被災住民がかつて慣れ親しんできた農業への回帰を通して、自らの生きがいや働きがいを求めて、自らの力で自立し、生活再建への道を探ろうとする一歩である。それは農水産省が「環境保全型農業」として認定した新しい農業生産方式への「フクシマ発のモデルづくり」への挑戦でもある。
実証栽培試験を通して、当方式が簡便で、低コストで、上質な野菜や花卉類を生産する技術であることを実証し、多くの被災者や過疎自治体の賛同を得て、フクシマ復興再生に向けた、野菜やイチゴなど地場ブランド農産物の一大生産基地をつくりあげようとする挑戦へとつなげていきたい。
「 ラ ジ ア ン ト ハ ウ ス 有 機 農 法 」 の 提 案 を 受 け て
「ラジアントハウス有機農法」とは?
「ラジアントハウス有機農法」の基本は、土壌加温でバランスのよい微生物層をつくる農法である。真冬、ハウスの中は別世界。葉はしげり実がたわわ。土からたちのぼる香りと温かみに包まれながら健康野菜の栽培に心地よい汗をながす。あの懐かしい味と香りの、そして色つやと日持ちが良い一品の収穫は今が最盛期。この環境を作り出すのが「深層地中加温」である。
この有機栽培の作柄を左右するのは土壌微生物。つまり作物に直接影響をおよぼす共生(有用)菌と寄生(病原)菌、前作の残根や堆肥を分解する腐生(有用)菌などである。雑多でおびただしい数の菌が干渉(きっ抗)しあいながら、ひとつの微生物相をつくっている。
作物が発病するのは、このきっ抗がくずれ、病原菌が優勢となるからで、この相を翌年にもちこすと連作障害がおこる。「ラジアント有機農法」は、このような微生物の相と働きを、土壌を加温することによりバランスのよい微生物相をつくる農法である。本農法は、平成12年9月12日、農林水産省によって、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な「環境保全型農業」であると認定されている
(社)日本施設園芸協会による「深層地中加温」の評価
農林水産省の補助事業として、(社)日本施設園芸協会が平成10年から5年間、施設園芸における先端技術の開発の現状と現場への可能性を調査し、新しい施設園芸経営体の確立を資する目的で、「最先端技術実用化推進事業」を実施している。
その中で「ラジアント有機農法」における「深層地中加温」は、「温・湿度制御検討会」で取り上げられ、平成16年3月、同協会発行の「最先端施設園芸技術実用化推進事業報告書」に、次ぎのように(一部抜粋)記載されている。
○「深層地中加温」とは、従来から行われている野菜・花等の栽培で根域付近の比較的浅い(15~20cm)土層に発熱体を埋設して地温を高める地中加温に対して、格段に深い(50~90cm)土層に発熱体を設置し、広範囲の土層を加熱しようとするものである。
○本法は、平成5年頃から地中に樹脂パイプを埋設し、熱媒体を循環させる方式により、厳寒期に凍結の懸念、あるいは埋設したまま耕うん作業する場合の損傷の危険などを回避するねらいで、主に寒冷地などにおいて、地中加温として実用に供され始めている。
○その後、一部の花き類の促成栽培において、冬期の生育適地温を確保するという本来の目的に加えて、夏期の太陽熱利用と併用して土壌消毒法として利用することが考えられ、多目的利用による効果が上がるようになり、その特徴の認識が高まるとともに、導入事例が次第に増加しつつある、新しい技術である。
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被 災 者 の 生 活 再 建 へ の 道 筋 づ く り に 向 け て
「 ラ ジ ア ン ト ハ ウ ス 農 法 」 の
実 証 栽 培 試 験 プ ロ ジ ェ ク ト 案
1 福 島 県 内 で の 3 地 域 別 実 証 試 験 栽 培 作 物 案
「ラジアントハウス有機農法」の実証栽培試験を実施するにあたり、福島県内の3地域別「試験推奨作物案」を次の通りとする。
①浜通り地域
浜通りは太平洋沿岸で日射量も豊富で「深層地中加温」のみで栽培可能な背丈の低いイチゴ、メロン、スイカ、アスパラ、ほうれん草が適している。この地域は宮城県のイチゴ生産地亘理町の南方に位置している。その亘理町に隣接している相馬市でも栽培実績のある「イチゴ」を実証試験の1番候補としたい。
②中通り地域
中通りでは矢吹町、須賀川市で実績のある背丈の高い「トマト、キュウリ」の実証試験を一番候補としたい。ただし、地上部の「加温パイプ」による実証栽培検証の確認が不可欠である。
③会津地域
これまでに、喜多方市で「ホワイトアスパラガス」の3月出荷を実現している。この地域では、冬季の積雪による日照不足を利用する「アスパラガス」の栽培を検証したい。
2 「 3 つ の 実 証 栽 培 試 験 」 の 実 施
上記の3地域別「実証栽培試験作物案」を前提として、ラジアント農法の発明者杉浦武雄さんの指導のもと、10アール程度(1反、1000㎡)の「空きハウス」を利用した実証栽培試験を実施し、栽培方法、生育状況を確認し、情報の共有化を図る。
①「既設イチゴ栽培ハウス」でのイチゴ栽培試験
イチゴ栽培農家を対象とする。通常定植は9月初旬~9月末で、既に畝作りは終えているため、土中60cmへのパイプの埋設はできない。今年は苗の下部に加温パイプを添わせる方式で地中加温の効果と省エネを確認する栽培実証試験を行う。40~60cm深さへのパイプ埋設と土壌消毒は来年の提案とする。
②「仮ハウス」、「空きハウス」でのイチゴ栽培試験
イチゴ栽培経験者を募り、「仮ハウス」または「空きハウス」で本法の効果を確認する栽培実証試験を行う。
③「空きハウス」でのその他野菜栽培試験
被災地農家出身者を対象に、これまで栽培経験のあるほうれん草等の作物について、「空きハウス」で本法による栽培実証試験を行う。
3 実 証 実 験 別 必 要 設 備 お よ び 必 要 費 用 概 算
①仮ハウス
1000㎡規模で約1000~1300万円
浜通りで積雪の心配ない地域での価格を地元の農協に問合せる必要がある。
②HP熱源による深層地中加温方式
○イチゴを含む「A作物」の場合は500万円。
HP1台、60cmの土壌掘削、パイプの埋設作業費用等。
○「B作物」の場合は600万円。
○「C作物」の場合はHPを1台増やし、ハウス内加温パイプを下段から3段まで設置す
るため400万円増となる。
③その他
○機械室兼作業室
ハウスに隣接し、内扉、外扉を有する約200~300㎡
○HPのため電源は電力のみ。2台のHPで消費電力は約9KW。
備考
最初の実証栽培試験においては、低コスト化、準備工期の短縮の面から、「HP」の代わりに「灯油ボイラー」を使用することが望ましい。イチゴが対象の場合、1000㎡のハウスであれば、設備費約200万円程度、約1か月の工期で栽培試験を開始することができる。
4 実 証 栽 培 試 験 の 評 価
上記の「3つの栽培実証試験」において、「燃料消費量」、「収穫量」、「土壌消毒実施の効果」、「消毒期間の日数」、「消毒にかかる燃料費」、「植物残渣の土壌への鋤き込み手順とかかわる人数」等のデータの収集、整理、分析を行う。特にイチゴについては、栽培地温の最適化で、ハウス内温度3~5℃に保つことにより、美味しく、大きく、高い糖度のイチゴが生産できるかどうかを確認する。
これら結果を踏まえて、次の段階の実証栽培試験では、10アール規模の2つのモデルハウスの建設を提案する。さらに被災者、被災自治体、周辺自治体の参加を募り、収益、省エネ、省力等の実際的な成果を確認し、当農法のフクシマ復興再生事業としての可能性を確認することとしたい。
5 実 証 栽 培 試 験 の 実 施 体 制 づ く り
農林水産省により「環境保全型農業」に認定されている「ラジアントハウス有機農法」が事故原発被災者の自立、生活再建につながる可能性を確認するとともに、その後の県内過疎地の活性化施策と一体となった「フクシマ復興再生事業」としての推進を応援する目的で、次の通り実証栽培試験の実施体制をつくる。
①組織の名称
ラジアントハウス有機農法
フ ク シ マ 実 証 栽 培 試 験 プ ロ ジ ェ ク ト
②プロジェクト構成メンバー
当農法の実証栽培試験について、被災住民・自治体、周辺住民・自治体、その他関連組織 団体、国(復興庁福島復興再生総局)、福島県等に広くPRし、プロジエクトへの参加メンバーを募る。
③プロジェクトの役割課題
○実証栽培試験に必要な「空きハウス」の確保
○必要な施設、工事の見積もり、導入
○実証栽培試験案の作成および必要経費の見積もり
○実証試験要員の確保
○実証試験に必要なフアンドの調達
○実証栽培試験の実施指導
○実証栽培試験のデータ整理
○過疎地対策と一体となったフクシマ復興再生事業としての展開構想の提案
「深層地中加温方式」による野菜や花卉の実証栽培試験への取り組みは、原発事故被災住民がかつて慣れ親しんできた農業への回帰を通して、自らの生きがいや働きがいを求めて、自らの力で自立し、生活再建への道を探ろうとする一歩である。それは農水産省が「環境保全型農業」として認定した新しい農業生産方式への「フクシマ発のモデルづくり」への挑戦でもある。
実証栽培試験を通して、当方式が簡便で、低コストで、上質な野菜や花卉類を生産する技術であることを実証し、多くの被災者や過疎自治体の賛同を得て、フクシマ復興再生に向けた、野菜やイチゴなど地場ブランド農産物の一大生産基地をつくりあげようとする挑戦へとつなげていきたい。
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