昨日に引続き本年度高連協新年集会(討論会)議事を受けて、高連協共同代表の堀田 勤氏が下記の総括意見を発表されていますので、どうか今後の高連協活動にご関心を寄せてくださるようお願いします。
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〇 総 括  堀 田  力  共 同 代 表

  本日いただいた提言を荒っぽく全部まとめて言えば、私たち高齢者が頑張って働き暮らす場をつくろうという提言ばかりであり、行政に対してやって欲しいという提言はなかった。そういう心意気が高連協創立後ずっとしっかり保たれ、具体的なかたちになってきている。本当に皆様方のその素晴らしい立ち位置、考え方に深い敬意を表する。仲間として大変嬉しく思っている。

◍  地域主体による取組みに変わってきた行政の施策

  今日のいくつかの提言は、地域の実情に応じてきめ細かい仕組みをつくっていくのだと感じるものが多い。元々私たちは地域で暮らし、地域での高齢者の暮らし方についての提言をし、あるいは、地域でのいろいろな活動、助け合いの活動やその仕組みづくりに頑張ってきたが、行政のほうは大体「それはそっちで頑張ってくれよ」、「行政がやらない部分はそっちでよろしく」という感じで今まできていた。しかし、ここにきて高齢者施策、障害者施策、子どもに対する国の施策はいずれも大きく転換して、地域での支え合う仕組みを入れたものをつくり、「一緒にやっていこう」、「むしろ地域主体でやって欲しい」という方向に大きく転換しているところだと思う。

 ◍  介護保険制度発足5年後の見直しで打ち出された「地域包括ケア」

  少し具体的に高齢者の問題について言うと、介護保険制度施行後5年を目途とする同制度の見直しに資するために、2003(平成15)年に『2015年の高齢者介護──高齢者介護を支えるケアの確立について──』という政策提言を行った。不肖私が座長を詰めさせていただき、樋口さんは都知事選のためにその委員会の委員を途中で退任されたが、その前にしっかりお考えを承っていたので、その考えを十分体して、ここで「地域包括ケア」という行政の政策の方向が、そしてここで地域という方向がはっきり打ち出された。

  つまり、この「地域包括ケア」というのは、最期まで、住み慣れた地域、自宅で暮らせるという介護あるいは医療に変えていこうという提言である。それは、地域で自分を生かし、自分と親しい仲間たちと最期まで顔を合わせふれ合うという暮らし方が一番幸せで、人間の尊厳を最期まで保つ暮らし方だからそれを目指そうというものである。

 ◍   10年目の見直しで実現した24時間地域巡回型訪問サービス

  それが10年目の2013年秋の見直しでさらに詰められて、24時間、いつでも必要な時にヘルパーさん、看護師さんが来てくれる体制(「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」)、つまり24時間巡回サービスに変えようという提言があり、これについても、私は具体的な部分を詰める「24時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会」の座長を務めさせていただいた。すでに全国200か所で実現していて、利用者の方はとても満足しておられる。そのため、サービスを提供する事業者も喜んでいる。

  しかし、最期まで地域で介護してもらっても、あるいは看護師が来ても、寂しいのでは何のために自宅で、住み慣れたところで最期を過ごすのか分からない。これには地域でしっかり訪ね、話し、本人のできるところはしてもらい、精神的にも最期まで自分らしく、どのような状態になっても持てる能力を生かして暮らしていけることが実現しないと、何のために24時間サービスをしているのか分からない。そこで、地域の力が格段に求められる。そういう施策が実現し、少しずつ市町村が採用している状況である。

 ◍  要支援の市町村事業への移管に伴い求められるNPOや地縁団体によるきめ細かな生活支援サービス

  それから、要支援者に対する介護保険サービスが市町村にこれから2年間で移管され、その分のお金は国のほうから回るが、ただ要支援者の生活を支えればいいというだけでは何のためにそうしたのか分からない。市町村で、つまりそれぞれの住んでいる地域できめ細かく生活の支援を、今までのように事業者だけにやってもらうのではなくて、可能な限り、家事援助、食事サービス、あるいは移送サービス等についてはNPOの生活支援サービスと地縁団体による支え合いなど地域サービスを優先的に組み合わせてやっていく必要がある。何故ならば、そのほうが、心が通い本人の意向に沿ったサービスが提供でき、中身の質もよく、サービスを提供している人も生きがいを得ることができるからである。

  西山さんのおっしゃったようなポイント制、これは時間預託と謝礼つきのボランティアを組み合わせた仕組みで、1990年代からこれをずっと広めにかかってきた。介護保険制度ができてから少し衰えたが、そういうものを強く復活させながら、地域で、地域の力を借りて、きめ細かに支えるという仕組みを実現していこうとしている。これもよりよいサービスを、より安い財政つまり負担で実現しようという動きである。

◍  子育てに地域も参加する政策に転換

  今、子どもの政策もここで大きく転換した。今度の増税分6兆円のうちの7,000億円が子どもの政策に充てられようとしている。これについても樋口さんと一緒に「にっぽん子育て応援団」の共同代表をさせて頂き、外野からいろいろ提言してきた。これは単に幼稚園と保育園を一緒にするということだけではなくて、地域でしっかり子育てをしようというものである。あの精神的に厳しい子育てを親だけに任せるのではなくて、幼い頃から地域が参加し、いろいろな年齢の子どもたちが集まる拠点をつくり、そこでいろいろ子ども同士で頑張る力や助け合う力、一緒に遊ぶ楽しみを覚えて、自助・共助の力をつけてもらう。そういう子育ての環境を皆でつくっていこうという政策がしっかり正面に据えられている。だから、政策は、地域の子育て支援拠点をつくり、子育て支援をするコーディネーターをつくろうというものになってきている。

 ◍  生活保護に至る前の段階の自立支援策として必要不可欠な地域の力

  さらに水野さんがおっしゃった、貧しい、困っている方々についても、政策ががらりと変わり、おそらくこの財政状況で最後のプラスの福祉の仕組みではないかと言われている「生活困窮者自立支援法」が昨年暮れの第185回国会で可決し、12月13日に公布され、2年後の2015(平成27)年にスタートすることになっている。これは、第二のセーフティーネットと言われ、生活保護に落ちる前の段階で、生活が困窮している方々を、行政もその仕組みをつくるが、地域の皆に参加してもらって、何とかその方の能力をできれば就業、就業でなくても中間就労、NPO等に活かし、自分で活力を持って生きがいを持って生きて頂くものである。この仕組みは、生活困窮者も単に行政がハローワーク等と組んで就業先を見つけるだけではなくて、まず引っ籠っていて家から出てこられない若者、心傷ついた若者、会社に行けない若者たちを含めてそういう方々を何とか社会に出てきて頂き、そしてその方のしたいようなことで社会参加をする。それによって、活力、生きる意欲を取り戻し、生きがいのある暮らしに戻すという作業である。したがって、これは、地域で本当は出ていきたいのだけれど出ていくのが怖くもなっている方々を地域にうまく出てきて頂き、自信を少しずつ持って頂き、その方に適した場所を探し出し、そこで頑張るように皆で支える。地域の参加がないと、これは絶対ワークしない仕組みである。

◍  高連協の精神が生かされる仕組みができつつある今こそ、われわれの目指す社会に向けて一歩踏み出そう!

  いま行政の施策は、勿論障がい者への対応も、「障がい者は地域へ」という動きがあるので全部地域の力を借りないとできない。そういうところに、手を届かせ、その地域の力を借りて、むしろ地域の力を主体にして、行政はそれをサポートするようなかたちの仕組みづくりに変わっている。これは、われわれがずっと活動をやってきて初めてのことである。言ってみれば、高連協のわれわれの精神が行政も含めてしっかり生かされる仕組みができ、そういう方向に転換しつつある。今こそわれわれの思いを生かし、そこに存分に参加して、「楽しいよ」と実感できる社会を皆でつくる時がきていると思う。

  たとえば、高齢者が、要支援に関わる団体をいくつもつくり、地縁団体も活動を盛んにしていく役割を持ったコーディネーターを置こうということで、コーディネーターをつくるための予算が取り敢えず5億円できた。それに適した方がずらりとここにお揃いになっている。是非是非自分の地域でのコーディネーターに手を挙げていただきたい。そういう支援をやり、知恵を出すには最適なメンバーがここに揃っているわけだから、この機会にわれわれが目指す社会に大きく一歩踏み出せるように、一緒にやることができれば本当に嬉しいと思っている。一緒に頑張ろう。  以 上(記録:玉木康平)

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