Smn:遠い「生涯現役社会」高齢者再雇用
2013年7月13日 お仕事 遠 い 「 生 涯 現 役 社 会 」
高 齢 者 再 雇 用 ・・・ 狭 き 門 、 給 与 は 半 額
産経ニュース/2013.7.13 17:26 (1/3ページ)[地域の話題]
東京都足立区の大村健太郎さん(64)の朝は早い。午前中、近くのハローワーク足立で仕事を探す。午前8時半から始まる55歳以上の専用窓口は混み合い、15人以上が順番待ちをすることも。通い始めて、すでに5か月がたった。
居酒屋経営などを経て、2年ほど前に飲料メーカーの配送補助に就いたが、腰を痛めて1年余りで退職。現在は失業保険と妻のパート収入でしのぐ。あと1年で国民年金がもらえる年齢だが、やむを得ない事情があり納付期間が足りない。
未納分をまとめて支払うことで受給資格を得ようと考えているが、「まとめて支払うお金を捻出することも大変だし、受給できてもわずかな額しかもらえないだろう」と肩を落とす。
間もなく失業保険も終わる。「わがままばかり言っていられない」と、通勤に30分以上かかる江東区で面接を受けることにした。
選挙カーの声に耳を澄ますが、年金や医療、介護など高齢者に直結する社会保障施策に踏み込む候補はほとんどいない。大村さんはため息をついた。
「どの政党も頼りにならず、70歳以降の人生設計が描けない。結局は自分で働くしかないのか」
7 割 「 働 き た い 」
高齢者の人口増に加え、税収不足で年金に充当する財源も不足している。受給年齢を上げざるを得ず、受給額は減るという負のスパイラルに陥っている。
今年度から、厚生年金の受給開始年齢は61歳になった。今後、段階的に延長され、平成37年には65歳に。これに伴い高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの全社員の継続雇用が企業に義務づけられた。定年退職をしたのに年金が受け取れない「空白期間」を防ぐのが狙いだ。
4月にパートを辞めたばかりの金子敬子さん(62)は職探しの日々だ。年金を受給できるめどもたち、「私たちはギリギリセーフの世代。若い人たちがかわいそう」と話すが、「『これまでこんなに支払い続けてきたのに…』と思うほど、微々たる額しかもらえない。働けるうちは働かないと」とこぼす。
現在64~66歳の団塊の世代(昭和22~24年生まれ)に「何歳まで働きたいか」と尋ねた平成24年の内閣府調査では、約7割が65歳以上も働きたいと回答した。
ただ、現実は厳しく、東京労働局職業対策課の佐々木幸彦高齢者対策担当官(49)は「継続雇用の義務化で、再就職を希望する高齢者の職場確保にまで手が回らない企業が多い」と指摘する。
高齢者雇用の影響は若年層にも及ぶ。東京都産業労働局が3月に発表した調査では、高齢者を雇用する際に「若年層の採用を抑制せざるを得ない」と答えた事業所は36・4%に上った。
定 年 を 6 5 歳 に
採用抑制に傾く企業ばかりではない。スーパーのイオン(千葉市)は19年、定年を65歳に引き上げた。昇進や昇給の機会もある。こうした人事体系が取れるのは「弊社に年功序列はなく実力主義。昇進に年齢や性別は関係ない」という社風のおかげだという。
厚生労働省は今年度から全国の主要なハローワークに高齢者向けの相談窓口を設けた。高齢者専門の相談員2人を配置したハローワーク足立では4、5月の55歳以上の就職者が前年同期比5・1%増となった。
ただ、求職者の希望に合う仕事は少ない。ハローワーク足立の井坂宗冊(むねあき)職業相談部長(57)は「条件面にこだわりすぎて、就職までに時間がかかる場合も多い」と話す。
田中弦二(つるじ)さん(62)は5年ほど前に24年間勤めたボウリング場を退職した直後に入院。生活保護を受けながら、昨年5月までガードマンとして働いた。厚生年金の納付期間が短いため、受け取れる年金は月7万円程度。経験のあるガードマンの職を紹介されたが、提示された給与は以前の半額しかなかった。
再度職探しに訪れることを約束し、ハローワークを出た田中さんはこうこぼした。「働けというなら高齢者の給料を上げてほしい」
(松岡朋枝、道丸摩耶)
◇
改正高年齢者雇用安定法 4月に施行され、厚生年金の男性の受給開始年齢が60歳から段階的に65歳に引き上げられることに伴い、希望者全員の65歳までの雇用を企業に義務づけた。継続雇用の方法は定年の廃止・延長や再雇用など。嘱託やパートなどに雇用契約が変わることによる待遇悪化や、有期契約の労働者の再雇用は義務づけられていないなどの問題もある。
◇
国民年金と厚生年金 国民年金は国内の20歳以上60歳未満のすべての人が加入し、基準年齢に達したり障害を負ったりした場合などに受け取ることができる。基準年齢で年金を受け取るには、現在は25年以上の加入が必要で、40年間保険料を納めた場合、65歳から受け取る基礎額は年78万6500円(平成24年度)。民間企業の従業員は厚生年金、公務員は共済年金に加入し、加入期間や平均年収に応じた額を国民年金に上乗せして受け取ることができる。
高 齢 者 再 雇 用 ・・・ 狭 き 門 、 給 与 は 半 額
産経ニュース/2013.7.13 17:26 (1/3ページ)[地域の話題]
東京都足立区の大村健太郎さん(64)の朝は早い。午前中、近くのハローワーク足立で仕事を探す。午前8時半から始まる55歳以上の専用窓口は混み合い、15人以上が順番待ちをすることも。通い始めて、すでに5か月がたった。
居酒屋経営などを経て、2年ほど前に飲料メーカーの配送補助に就いたが、腰を痛めて1年余りで退職。現在は失業保険と妻のパート収入でしのぐ。あと1年で国民年金がもらえる年齢だが、やむを得ない事情があり納付期間が足りない。
未納分をまとめて支払うことで受給資格を得ようと考えているが、「まとめて支払うお金を捻出することも大変だし、受給できてもわずかな額しかもらえないだろう」と肩を落とす。
間もなく失業保険も終わる。「わがままばかり言っていられない」と、通勤に30分以上かかる江東区で面接を受けることにした。
選挙カーの声に耳を澄ますが、年金や医療、介護など高齢者に直結する社会保障施策に踏み込む候補はほとんどいない。大村さんはため息をついた。
「どの政党も頼りにならず、70歳以降の人生設計が描けない。結局は自分で働くしかないのか」
7 割 「 働 き た い 」
高齢者の人口増に加え、税収不足で年金に充当する財源も不足している。受給年齢を上げざるを得ず、受給額は減るという負のスパイラルに陥っている。
今年度から、厚生年金の受給開始年齢は61歳になった。今後、段階的に延長され、平成37年には65歳に。これに伴い高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの全社員の継続雇用が企業に義務づけられた。定年退職をしたのに年金が受け取れない「空白期間」を防ぐのが狙いだ。
4月にパートを辞めたばかりの金子敬子さん(62)は職探しの日々だ。年金を受給できるめどもたち、「私たちはギリギリセーフの世代。若い人たちがかわいそう」と話すが、「『これまでこんなに支払い続けてきたのに…』と思うほど、微々たる額しかもらえない。働けるうちは働かないと」とこぼす。
現在64~66歳の団塊の世代(昭和22~24年生まれ)に「何歳まで働きたいか」と尋ねた平成24年の内閣府調査では、約7割が65歳以上も働きたいと回答した。
ただ、現実は厳しく、東京労働局職業対策課の佐々木幸彦高齢者対策担当官(49)は「継続雇用の義務化で、再就職を希望する高齢者の職場確保にまで手が回らない企業が多い」と指摘する。
高齢者雇用の影響は若年層にも及ぶ。東京都産業労働局が3月に発表した調査では、高齢者を雇用する際に「若年層の採用を抑制せざるを得ない」と答えた事業所は36・4%に上った。
定 年 を 6 5 歳 に
採用抑制に傾く企業ばかりではない。スーパーのイオン(千葉市)は19年、定年を65歳に引き上げた。昇進や昇給の機会もある。こうした人事体系が取れるのは「弊社に年功序列はなく実力主義。昇進に年齢や性別は関係ない」という社風のおかげだという。
厚生労働省は今年度から全国の主要なハローワークに高齢者向けの相談窓口を設けた。高齢者専門の相談員2人を配置したハローワーク足立では4、5月の55歳以上の就職者が前年同期比5・1%増となった。
ただ、求職者の希望に合う仕事は少ない。ハローワーク足立の井坂宗冊(むねあき)職業相談部長(57)は「条件面にこだわりすぎて、就職までに時間がかかる場合も多い」と話す。
田中弦二(つるじ)さん(62)は5年ほど前に24年間勤めたボウリング場を退職した直後に入院。生活保護を受けながら、昨年5月までガードマンとして働いた。厚生年金の納付期間が短いため、受け取れる年金は月7万円程度。経験のあるガードマンの職を紹介されたが、提示された給与は以前の半額しかなかった。
再度職探しに訪れることを約束し、ハローワークを出た田中さんはこうこぼした。「働けというなら高齢者の給料を上げてほしい」
(松岡朋枝、道丸摩耶)
◇
改正高年齢者雇用安定法 4月に施行され、厚生年金の男性の受給開始年齢が60歳から段階的に65歳に引き上げられることに伴い、希望者全員の65歳までの雇用を企業に義務づけた。継続雇用の方法は定年の廃止・延長や再雇用など。嘱託やパートなどに雇用契約が変わることによる待遇悪化や、有期契約の労働者の再雇用は義務づけられていないなどの問題もある。
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国民年金と厚生年金 国民年金は国内の20歳以上60歳未満のすべての人が加入し、基準年齢に達したり障害を負ったりした場合などに受け取ることができる。基準年齢で年金を受け取るには、現在は25年以上の加入が必要で、40年間保険料を納めた場合、65歳から受け取る基礎額は年78万6500円(平成24年度)。民間企業の従業員は厚生年金、公務員は共済年金に加入し、加入期間や平均年収に応じた額を国民年金に上乗せして受け取ることができる。
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