私は瀬戸内海の離れ島でのんびりと高校まで過ごしたためか、一流大学進学をめざそうにも受験能力はもとより心備えや挑戦意欲の気迫不足から、意に沿う大学合格への可能性は低く、有力企業に入社して社会人として自立確保が可能な人生目標をどうすべきか・・・零細農家の老いた父母と真剣に語り合うことも叶わず、侘しく郷里を後にした愚かさをいまも亡き両親には申し訳ない思いである。

 幸か不幸か老父母の家業を引継ぐ予定や島で就業する気持ちもなかったので、わが人生目標は一先ず大学進学後に考えることとした。高卒一浪後の大学受験が第一志望国立大学一期校で再度失敗。そして第二志望の国立大二期校での滑り止め合格をわが運命と受け入れたものの、経済関係から語学関係に転換した結果、大卒後の就職先選定に伴う人生進路の定め方には改めて再構築が必要となった。

 学費仕送りにも大変な老父母には実姉宅に居候下宿の通学で殆ど負担をかけず、家庭教師を含む各種アルバイトにも将来の進路選定にも役立つ実体験になると意欲的に楽しく捉えることができた。アルバイト先での他大学生たちとの交流やデパート商品や郵便配達での活動を通し、社会人への予備労働から関係する人物評価に関心を抱き、それが就職先選定の営業業種に結び付いたように感じている。

 残念ながら専門の語学では就職門戸は望めそうもなく、アルバイトでの営業職種に関心を抱いて迷わず大学卒業と同時に高度経済成長期に入ったわが国証券業界の有望さに賭けた準大手企業に入社ができたのは幸運だった。しかも法人担当先を大阪拠点に活動するに当たってアルバイトでの予備活動が無駄にならなかったことも有難い。

 しかも、日本企業特有の企業内労働組合活動には破目を外すことはなかったが、組合執行三役として横組織の自由な全国支店ネットの活動で社会人材の人物評価、団交や会社経営者の能力評価など学べることに際限がなかった。それ以上に社内と社外の人物評価に関する比較を事あるごとに自己評価を含めて学び得たことも恵まれた職場だった。

 法人営業担当先の企業役員、とくにIPO株式上場を勧誘開拓する場合の創業者にはサラリーマンがとても真似られないベンチャー精神旺盛な人物像がわが関心を大いに満足させた。優秀な中堅企業の創業者には必ず魅力的な人生哲学がある。先ず他者とは一味違う専門分野で注目できる勝者の風貌があり、何といっても生涯現役でその事業に取り組む先取りの精神がある。それが魅力十分な経営者の人物評価を高めていた。  つづく

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