一体改革は生涯現役社会を目指してるか
2012年7月6日 お仕事 日本生涯現役推進協議会の関心あるネット情報を下記に転載ご紹介します。
【 ご 参 考 関 連 U R L 】
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0621&f=business_0621_065.shtml
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一 体 改 革 は 生 涯 現 役 社 会 を 目 指 し て い る か = 大 和 総 研
社会保障・税一体改革では、10%程度への消費税率引上げのほか、歳を重ねても現役で活躍し続けられる社会システムの整備が必要だ。意欲と能力に応じて、人々が年齢と関係なく現役世代でいられるようにすることは、超高齢社会を維持する上で不可欠である。厚生科学審議会がプラン策定を進めている2013年からの国民健康づくり運動では、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の伸長が重要目標とされる。
一体改革では、高年齢者雇用安定法の改正法案が国会提出されている。現在、65歳への定年引上げまたは定年後の継続雇用制度の導入等が企業に義務付けられており、近年、定年後の再雇用が一般化してきたことで、60歳代前半男性の労働力率が目立って上昇している。厚生労働省によると、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業割合は、大企業で99.0%、中小企業で95.3%に達する(2011年6月現在)。
ただ、高年齢者に関する労務政策上の戦略が十分とはいいにくく、企業側で60歳以上に対する労働需要が顕在化しているわけではない。また、従来の年金支給水準を考えると、労働供給側で勤労意欲を高める余地も大きい。今回の法案は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止、対象者が雇用される企業の範囲をグループ企業に拡大、義務違反企業名の公表、がポイントである。現時点では国会審議に入れていないようだが、知恵と経験が蓄積された人的資源を活性化させる観点から、労使双方の事情を踏まえた議論の深まりを期待したい。
もう一点、一体改革関連法案に盛り込まれていた高所得者への年金の減額が、民主・自民・公明の三党合意によって見送られることになった(法文の規定を削除し、引き続き検討する旨を規定)。政府案は、最大で老齢基礎年金満額の月額6.4万円の半分である3.2万円が減額されるというもので、年収850万円から徐々に減額が開始され、年収1300万円以上は支給停止される設計だった。
公的年金は予想以上の長生きリスクに対応する保険だから、既裁定者の方々を含めて、現役並みの所得が稼げている間の年金は減額されてよいという考え方は成立するだろう。年金減額の対象者は現時点で年金受給者の1%以下に限定される見込みで、減額されるのは国庫負担相当分だから保険数理的な公正さはさほど犠牲にならないとの意見もあろう。だが、一方で、あえて引退せずに積極的に社会に参加し続け、税と保険料を負担し続ける人々の年金が、フローの所得が高いという理由で減額されるのが公正なのかという疑問も湧く。世代内の公平確保を税制ではなく年金の枠内で行うことの是非も問われよう。
すなわち、全員参加型社会や生涯現役社会を目指す上で、年金以外の所得・資産と年金をどう調整するかは、根本にある考え方の問題として極めて重要である。今回の年金減額案は、年収1000万円から減額を開始するという当初案から基準が下がり対象者が拡大した議論の経緯がある。本質的な改革を進めるためには、「減らしやすいところを減らす」ということであってはならないだろう。
(執筆者:鈴木 準 調査提言企画室長 株式会社大和総研)
【 ご 参 考 関 連 U R L 】
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0621&f=business_0621_065.shtml
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一 体 改 革 は 生 涯 現 役 社 会 を 目 指 し て い る か = 大 和 総 研
社会保障・税一体改革では、10%程度への消費税率引上げのほか、歳を重ねても現役で活躍し続けられる社会システムの整備が必要だ。意欲と能力に応じて、人々が年齢と関係なく現役世代でいられるようにすることは、超高齢社会を維持する上で不可欠である。厚生科学審議会がプラン策定を進めている2013年からの国民健康づくり運動では、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の伸長が重要目標とされる。
一体改革では、高年齢者雇用安定法の改正法案が国会提出されている。現在、65歳への定年引上げまたは定年後の継続雇用制度の導入等が企業に義務付けられており、近年、定年後の再雇用が一般化してきたことで、60歳代前半男性の労働力率が目立って上昇している。厚生労働省によると、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業割合は、大企業で99.0%、中小企業で95.3%に達する(2011年6月現在)。
ただ、高年齢者に関する労務政策上の戦略が十分とはいいにくく、企業側で60歳以上に対する労働需要が顕在化しているわけではない。また、従来の年金支給水準を考えると、労働供給側で勤労意欲を高める余地も大きい。今回の法案は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止、対象者が雇用される企業の範囲をグループ企業に拡大、義務違反企業名の公表、がポイントである。現時点では国会審議に入れていないようだが、知恵と経験が蓄積された人的資源を活性化させる観点から、労使双方の事情を踏まえた議論の深まりを期待したい。
もう一点、一体改革関連法案に盛り込まれていた高所得者への年金の減額が、民主・自民・公明の三党合意によって見送られることになった(法文の規定を削除し、引き続き検討する旨を規定)。政府案は、最大で老齢基礎年金満額の月額6.4万円の半分である3.2万円が減額されるというもので、年収850万円から徐々に減額が開始され、年収1300万円以上は支給停止される設計だった。
公的年金は予想以上の長生きリスクに対応する保険だから、既裁定者の方々を含めて、現役並みの所得が稼げている間の年金は減額されてよいという考え方は成立するだろう。年金減額の対象者は現時点で年金受給者の1%以下に限定される見込みで、減額されるのは国庫負担相当分だから保険数理的な公正さはさほど犠牲にならないとの意見もあろう。だが、一方で、あえて引退せずに積極的に社会に参加し続け、税と保険料を負担し続ける人々の年金が、フローの所得が高いという理由で減額されるのが公正なのかという疑問も湧く。世代内の公平確保を税制ではなく年金の枠内で行うことの是非も問われよう。
すなわち、全員参加型社会や生涯現役社会を目指す上で、年金以外の所得・資産と年金をどう調整するかは、根本にある考え方の問題として極めて重要である。今回の年金減額案は、年収1000万円から減額を開始するという当初案から基準が下がり対象者が拡大した議論の経緯がある。本質的な改革を進めるためには、「減らしやすいところを減らす」ということであってはならないだろう。
(執筆者:鈴木 準 調査提言企画室長 株式会社大和総研)
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