宗教から見た国際政治(119) 「思惑」

  日本と中国の和解は難しいかもしれない。たとえ日本がドイツがイスラエルにしたように徹底した謝罪と補償をしても。その理由は中国が東アジアで主導権を握りたいからだ。東南アジア諸国にはFTA締結で日本に先行し、長年の日本の影響力を排除しようとしている。
  過日、インドとの歴史的和解が成立。共にアジアの盟主として臨む思惑か。中国学生デモの主張の眼目は、靖国神社参拝の中止でもなく、歴史教科書の削除・書き換え要求でもなく、国連常任理事国入りの阻止であることがはっきりしてきた。
  韓国の反日デモの主張も軌を一つにしている。米国内の中国系・韓国系市民の国連のアナン事務総長に対して日本の常任理事国阻止嘆願書・署名の提出を見ればわかる。要は中国・韓国による日本包囲網であり、日本の弱体化の思惑が潜んでいるから問題が深刻なのである。

  トマス・ホッブス(Thomas Hobbes,1588-1679)は、あらゆる人間には、力に対する恒久的な欲求が存在しているといっている。人間の間に生まれる不断の闘争に対して、三つの根拠を指摘している。一つは諸欲求を満足させるための闘争、二は、他人が力において自己を凌駕しないかという恐怖、三は、他人に対して優越することを喜ぶ人間性における心的志向である。これらが不断に、人間の間において闘争を引き起こすことになる。

  ホッブスの慧眼は21世紀前半の国際政治を考察する上でも示唆に富んでいます。中国はおそらく主導権を握りたいという欲求を抑えることはできないでしょう。誠実さが通じない相手とどのように外交をするべきか、アポリアにあたっています。

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