市民参画型社会の向こうにあるものとは!

 我が国では、政官財の癒着による利権誘導が止まず、法や理念を軽視して国や社会に利己的に依存する傾向が顕著です。国民は自らの利権に係わらない限り国や社会に無関心で、選挙の投票率も伸び悩み、道義心の喪失による無秩序化、凶悪犯罪の増加も指摘されます。一言で言えば、「人による支配」が行なわれるこの国においては、第二次大戦における全体主義の経験から、戦後多くの国民は愛国心を語ることをタブー視してきましたが、その結果私達が生活する国や社会への帰属意識の希薄さ、そしてそこへの誇りを持てない傾向は顕著となっています。このことと利己主義的な依存傾向は決して無関係ではないでしょう。

  こうした日本を再生し、明るい豊かな社会を実現するためには、法と正義に立脚した自由で民主的な社会を実現し、社会性への配慮の中での個性の最大限の尊重、言い換えれば個の利益と公益の妥当な調和が図られなくてはなりません。個人の尊重と言っても、それが単に身勝手の論理になっていては意味がなく、相互理解と思いやりに基づき互いの自己実現を最大限受け入れ、喜びを分かち合えることこそが、真の意味での個人の尊重なのではないでしょうか。

  隣人を理解し、地域社会を構成する者同士が愛着を感じ合うとき、地域への愛郷心もまた育まれることでしょう。その延長線上には国家があります。個性を抹殺する全体主義の道具としての愛国心ではなく、互いを尊重し合い、愛着を感じ、内からふつふつと湧き出す愛情が国民相互に生まれるとき、国民は国家に対しても愛着を感じ、自己実現と調和する範囲での社会貢献の意識も芽生えることと思います。これこそが私達の考える愛国心です。

  この意識を育むためには、戦後希薄になった我が国の歴史・伝統等の国民共通の基盤を改めて確認することが有益です。その基盤の上に、市民が共同生活し、支え合っている意識が醸成されるとき、市民の自立は促され、自ら国や社会の運営に積極的に係わることが期待されるのです。その先にあるのは、市民参画型社会であり、開かれた公正な自由競争の中で市民が相互の繁栄を獲得し、相互に支え合う社会なのです。

  このような市民参画型社会の実現に向けて、本年度東京JCは、これまでの各政策系委員会による政策立案を継続するほかに、あるべき国の基本政策そして国のかたちを総合的に究明していきます。そして、年間を通して積極的に国会議員との意見交換を行い、国の根幹に関わる基本法や制度(選挙制度、社会保障制度、安全保障制度等)、その延長線上にある憲法について、改正の要否、その具体像をとりまとめて対外的に発信し、その実現に向けて政策発信活動等の運動展開を図ります。その成果を集大成して、10月例会において、「新日本のかたちとは!?誇りある国家の再建に向けて?」として示し、さらなる運動展開につなげて参ります。

  私達の願い、それは、市民の意識改革と社会のシステム改革の両輪によって、この国に蔓延する依存型傾向を駆逐し、自立した市民自らの参画による実効的な民主制、自立相互型の社会保障、自主税財源による財政再建、自主自立の安全保障などを確立することです。ここでは、法と理念の下、国民一人一人が民主制の過程を通して国家権力をしっかりと拘束し、個と公の妥当なバランスを実現することが重要です。そして、これらの手段をもって私達が実現したい究極の理想とは、この国に活力と競争力を再生し明るい豊かな社会を実現すると共に、先祖から受け継いだ歴史・伝統に導かれ、市民が互いを尊重し助け合う誇りに満ち溢れた新日本を創造することです。今を生きる私達国民は、先祖からこの国を託されました。多くの同胞の数え切れない善意と犠牲の上に、今のこの国の繁栄が築かれていることを意識するとき、次なる世代への継承を確たるものとすることが、私達の重大な責務であることを再認識せざるを得ません。美しい日本が百年後も美しくあり続けることを願って、東京JCは新たな一歩を記します。
             国家政策特別委員会 委員長 田島 正広

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