5月18日(火)、19日(水)、20日(木)と3日間シリーズでの日経新聞朝刊の経済教室欄テーマ:「企業統治の新地平」上、中、下は、私たちが提唱する『生涯現役社会づくり』への構造改革に役立つ示唆を教えられます。

  18日の(上)では、神戸大学加護野忠男教授が「長期保有株主の優遇を」と題して、日本企業の統治(ガバナンス)構造が急速に変化していることから、経営の基本姿勢を理解してくれる株主、企業がモラルハザード(倫理欠如)を起こしにくい「良い株主」、そのために長期保有の株主優遇、育成に短期保有株主の議決権制限を訴えています。企業ガバナンスはそれ自体が目的ではなく、株主利益の増進が最終目的であると結んでいます。

  19日の(中)では、早稲田大学宮島英昭教授が「情報公開が経営者を規律」と題して、統治改革に取り組む企業は、執行役員制や持ち株会社などの選択で制度論議の局面は終了し、いまや最適な統治構造の確立をめざす段階だと指摘しています。機関投資家も投資改革への重要な担い手として期待されていると考えています。

  本日最終の(下)を担当する慶応義塾大学小幡 績助教授の「大株主に議決参加義務を」と題した論文でのご意見は、前2者よりストレートに「生涯現役社会づくり」の推進活動にも共通した強い示唆を受けました。それは、企業統治(コーポレート・ガバナンス)で最も重要なのは株主だと断言し、「生涯現役社会づくり」に最も効果を発揮する役目を担っているのは、ほかならぬ私たち少子高齢社会の生活者自身であるのと同様です。

  小幡助教授は、株主が企業価値最大化に向けて行動することを促がすため、3%以上の議決権を持つ大株主には、株主総会の議決に参加することを義務づけ、大株主の投票結果を株主全員に報告することを提言しますが、ご本人が株主総会に出席して株主の立場が最も弱いことを実感してのご意見だと思います。

  日本の株主総会や株主ガバナンスの法的基盤は、米英に次ぐ法的基盤が整っているのに、企業価値最大化を意図して経営をチェックするために、経営者が株主総会と正面から取り組む姿勢は欠落していると喝破しています。まさに選挙制度の仕組みから票田に影響される政治家にも似た短期保有株主には、株主総会に関しても興味は殆どありません。長期の生涯現役社会ビジョンを描ける国家戦略的な政治家が、ちょうど長期保有株主であるのと共通していることを私たちは悟るべきでしょう。

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