養老孟司氏は、「話せばわかる」は大嘘と断言した上後で、「わかっている」という怖さ、知識と常識は違うと、本当は何もわかっていないのに「わかっている」と思い込んで言うあたりが怖いといいます。

 その次に、「そもそも現実とは何か」という問題を提起して、現代においては自分たちが物を知らない、ということを疑う人がどんどんいなくなったと主張します。マスコミからの一定の情報だけでは私たちにはわかりようもないことが沢山ある筈だというのです。

 本来人間にはわからない現実のディテールを完全に把握している存在は、世界中で「神」だけだとの前提で、唯一絶対的存在の立場から日本人を見ると、八百万の神を認める世界では、本質的に真実は何か、事実は何かと追究する癖がないと説明します。

 そして、八百万の感覚では「絶対的真実は存在しない」から、欧米やイスラム社会の一神教と自然宗教の日本との立場には、大きな違いの認識が存在しているのだと喚起するのです。その客観的事実の存在は信仰的な領域に入るのに、日本では公平・客観・中立をモットーに唱えるNHK報道が盲目的常識とされていると。

 生涯現役を推進するに際して重要なことは、日本人のこの感覚を十分に認識した上で、対応することが大事だとつくづく感じます。

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