長らく読者モニター役を務める月刊「社会教育」誌の生涯現役特集号(98/1)で、標記の生涯現役論を生きがい支援システム研究所臼倉登貴雄所長が発表しています。
 「60歳以降の過ごし方をアクティブな視点で考える」と語る同氏の生涯現役論をご参考までにシリーズで以下転載することにしました。

 〔生涯現役論〕?

 60歳以降の過ごし方を「アクティブ」な視点で考える

円熟世代の誕生
 高齢化は長寿化と少子化によってもたらされているが、特に長寿化の進行は、人生80年時代を到来させ、従来のライフサイクルに円熟期という新しい人生時間を誕生させた。円熟期とは、60歳代と70歳代の年代層のことをここでは指している。(別表−1参照)
 これまでの人生の捉え方は、成長期から成熟期までが現役で、それ以後は現役から引退し完熟期をもって人生は終わるとみられていた。ところが、私たちの寿命が飛躍的に伸びたために、成熟期と完熟期の間に円熟期という人生時間が新たに誕生したのである。

下表−1  円熟期という新しい人生時間と生涯現役指向世代

0〜20歳 20〜40歳 40〜60歳 60〜80歳 80〜 歳
成長期  発展期  成熟期   円熟期  完熟期
      現役世代        生涯現役指向世代


 私たちの人生は、現役世代においては事細かに計画されているが、現役引退後の人生についての計画は皆無で、自らの努力で生きていくようになっているのが今日の現実である。人生60年、70年時代の人生の捉え方であればそれでも問題は少なかったが、今日ではこの円熟期という20年間の人生が新たに誕生したことによって、そうはいかなくなったのである。そのために、いま定年退職後の生き方が、新たな課題として取り上げられているのである。

 一方最近の動向として、60歳代以降の人たちの中に、現役から引退するのではなく、一生涯を現役で積極的に社会とのかかわりをもち、明るく元気に生活をエンジョイしていこうという人たちが多く見受けられるようになってきている。特にその傾向は、この円熟期の世代に高くなっている。
 このように、生涯を現役で積極的に生きていこうする円熟期と完熟期の人たちのことを「生涯現役指向世代」として、ここではみていくことにする。

 現在、円熟期の世代の人たちの数は、実に2千2百万人。円熟期と完熟期の世代の人たちを合わせれば、2千6百万人にもなる。
 この円熟期と完熟期の世代が、生涯現役を指向して、積極的な社会参加をしていくということは、これからの社会を動かす大きな存在になることは明らかである。勿論、生涯学習活動を推進するうえでも大きな影響を及ぼしてくるということである。特に、生涯現役を指向する円熟世代の誕生は、量的にもパワー的にも無視できない存在となっているのである。
 そこで本論は、そのような存在となっている円熟世代の60歳以降の過ごし方を「アクティブ」な視点から考えてみたものである。

                   つづく

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